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認魂レポート

第1回テーマ : 介護サービス利用拒否「行きたくない!」にどう対応するか?

参加者:

【介護職】 庄司俊彦1)、神保由貴2)、高橋芳雄1)、土田友美3)、徳長英人3)、長谷川悦子2)長谷川恭子4)、原島哲志1)、堀川麻里奈4)皆川伊砂子1)、皆川達也1)
【介護支援専門員】 相場優子1)、片貝すみ江5)、堀江加奈枝6)、渡辺敏子7)
【保健師】 本間友子8)、渡辺晃代8)
【看護師】 坂井美和子1)
【作業療法士】 川瀬敦士1)、皆川尚久1)
【医師】 川瀬康裕1)、川瀬裕士1)
【認知症地域支援専門員】 川瀬弓子1)

1)川瀬神経内科クリニック
2)うらだての里デイサービス
3)はあとふるあたごグループホーム三条
4)愛の家グループホーム三条上須頃
5)居宅介護支援事業所長和園
6)ケアプランセンター好日庵
7)在宅介護支援センターいっぷく
8)三条市福祉保健部高齢介護課

 


 

川瀬敦士 知症研修会ということで認魂を始めさせていただきます。宜しくお願い致します。アンケートがございます。FAXで後日、ご意見、ご感想など頂ければと思います。それでは開会挨拶を副院長からお願いしたいと思います。


川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬裕士 氏

川瀬裕士 当法人が昨年12月に認知症疾患医療センター診療所型に指定されまして、認知症の医療と介護とケアにまつわる部分に関して、正式に地域に貢献していく立場となりました。認知症の方と関わりを持って仕事をしている方々と今回のような話し合いの場を設定し、様々な技術を向上させていく研修会を行うことが疾患医療センターの業務の一つとなっています。事業所の垣根を取り払って、より良い介護とはどういうものなのかを探していくような会をやってみようと考えました。是非積極的な意見交換していただいて明日からの仕事に生かしていただければと思います。

川瀬敦士 本日のテーマは「介護サービス利用拒否【いきたくない!】にどう対応するか?」です。本人は介護認定をうけており、家族も介護サービス利用を望んでいますが、その本人が介護サービスを拒否しています。またデイサービス、デイケア、ショートステイなど通所系介護サービスを利用したがらないという現状があります。そして、行きたくないことに対応する意義ですが、通所系介護サービスに参加することで社会参加・知的活動・運動は認知症悪化とフレイルティ悪化を防ぐことが分かっている。通所系サービス利用は介護者の疲労や精神的ストレスを軽減させる。こういった状況になれば介護者に余裕ができ、心ある介護ができるようになる(好循環を生む)ということですね。次に当事者たちのそれぞれの気持ちを考えてみましょう。(図1)

: 当事者たちの気持ち

本人の声・気持ち 家族の声・気持ち
・家ですることがいっぱいある
・ただ行きたくない
・俺はまだボケてない
・人との会話するのが嫌
・まだ自分はいい
・意義を理解していない、できない
・恥ずかしい
・認知症になったことを認めたくない
・面倒くさい知らない人と話すのは疲れる
・家族が利用に消極的
・お金がかかる
・手続きが面倒
・口論になるから言いたくない
・一度説得しても当日には結局拒否する
・どう説明したら良いか分からない

川瀬敦士  本人または家族の気持ちとしてはこういうことが考えられると思いますが、これ以外にありますか?


うらだての里デイサービスセンター 介護スタッフ 神保由貴 氏

神保由貴 そうですね、「布団から出たくない」「何となく行きたくない」と言われる方はいますね。

川瀬敦士 その時は寝室、お部屋まで行くケースも結構あるんですね?

神保由貴 はい。

川瀬敦士 玄関まで準備している方ばかりではないんですね。

神保由貴 そうですね。

川瀬敦士 他にございますか?

川瀬康裕 体がなんぎぃ(苦しい)、具合が悪いとか。

川瀬敦士 体調不良ですね。確かにかわせみ(川瀬神経内科クリニック通所リハビリかわせみ)だと難病の方が多いので、本当に具合が悪い人もいるでしょうね。

相場優子 そうですね。(手足の)震えが強いから休みますとか。

川瀬敦士 パーキンソン病の方とか痛みを感じやすかったりしますからね。次にご家族の気持ちはどうでしょうか?家族の声で聞かれることはありますか?ケアマネージャーさんはどうですか?

参加者 実際に川瀬先生のところでお世話になっている方(男)で、その方は行きたがらなくて、でもちゃんと外の顔と内の顔があり、受診後にかわせみ(通所リハビリ)を体験していただいた時は問題なく過ごされていたのですが、自宅に帰ると「自分の最後は自分の好きなようにしていたい」と言って、拘束されてしまう感じがするから行きたくないと。この方は高齢者2人世帯で、奥様は「どうせ何を言ってもダメで、手が出てしまうから、しばらくはこのままでいい。」と言う。奥様も高齢で腰が90度に曲がっている状況で排泄介助や入浴介助をしているため、心配になります。時々、電話連絡し状況確認しているが、「どうせ来てもらってもダメだ」というばかり。何とか支援出来るタイミングをみております。

川瀬敦士 サービスを断ってからも、やはりそんな風になっているのですね。

 

‐事例から‐ケース1【迎車時間の変更】

川瀬敦士 それではここから事例をあげていきます。

川瀬裕士 90代の女性の方で、体調不良を理由に「絶対に行かない!行くなら殺せ!」と言っていたようです。

皆川伊砂子 はい、この方は農家の方で草取りが大好きで朝早くから草取り、家に帰ってからも草取りをしています。ですが草取りをしている間にだんだんと道路にまで出てしまい家族はとても危ないので何とか樫の森(通所リハビリ)を使ってもらいたいという気持ちがあったのですが、私達は送迎でお布団の所まで行くのですが絶対に起きないんですよね。布団をはごうものなら、もの凄い勢いで怒るのでそういった時は引き返すんでが、そこで時間をずらしていくとまるで人が違ったように起きてくることが何度かあったので、そういう時を目がけてお迎えに行っていました。一度樫の森まで来てしまえばもう大丈夫です。なので朝、ご家族にお電話して「もう起きていますか?」と聞いて、「今日はまだ寝ている」と言われると、起きた頃を見計らって、ちょうどごはんを食べ終えたような時間に迎えに行くと機嫌良く出てきています。このように家族と時間帯を相談しながら、最近は定期的にご利用されています。

川瀬敦士 「送迎時間を変える」というのは「送迎の順番を変える」ということですか?

皆川伊砂子 そうです。順番を変えています。

川瀬敦士 具体的にどのように変えていますか?

皆川伊砂子 朝お電話をして、もうごはんを食べ終わっていましたら朝1番に迎えに行きます。今起きたばかりでしたら、「何軒か回った後に伺います」と家族に電話連絡して伺っています。

川瀬康裕 まさにパーソンドケアに沿っていますね。起きたばかりだと機嫌が悪く、朝ご飯を食べた後で行くと来てくれる。頑なに拒否しているわけではなく自然と相手に合わせていけば、愛想良くなってくるということですね。

 

‐事例から‐ケース2【家族送迎】

渡辺敏子 (私の経験した例は)本人の言葉を借りると「あんなバカなところには行っていられない、行きたくない!」というケースです。家族は行ってほしい、本人は行きたくないという。通常通り家に居て、家の中のこと(家事)をして過ごしていらっしゃいます。でも家族は認知が進むのが心配で外に出てほしいと言う。ご本人は女性、家族は旦那さん、娘さんと生活していて、旦那さん、娘さんは車の運転ができるし、送ることもできるということでしたので家族にお願いをして事業所まで家族に送ってもらいましたが、本人が車から降りなかったことがありました。(その他に)いろいろあって、初回はまず嫌な思いをさせないように話し合いを済ませて、まずは楽しい所、行っていい所なんだよとご本人にわかっていただけるように、ご家族に一緒に付いていてもらい、送ってもらって、一日事業所で過ごしてもらうというやり方をさせていただきました。はじめは送迎車には乗らなかったので、ご家族からしばらくは車で送ってもらって、事業所で過ごすのも丸1日過ごせなかったので半日と、とにかく慣れてもらおうと思って、やっていただきました。当初週1回のペースで利用していましたが、1ヶ月ちょっとご家族に協力してもらって、それで慣れたことによって、その後は送迎車にも抵抗なく乗ることができ、通常の時間帯でも利用することができ、今現在その方は週3回利用にいたって抵抗なく穏やかに過ごされています。

川瀬敦士 何か聞いてみたいことはありますか?
グループホームだと何かご家族を巻き込んで、関わっていくことはありますか?


はあとふるあたごグループホーム三条 介護スタッフ 土田友美 氏

土田友美 ご家族からは本人のわからない部分、本人が伝えられない部分を今まではどうだったのかなどお話しする機会はけっこうありますね。そこから本人のことが見えてくることもございます。このケースだと認知症を持っていて「あんなところは行きたくない」という想いが残っているということは、本人に対して嫌な部分を探ってそれが何なのか、原因を読み解いたり・・・

川瀬敦士 (ここでは)何か不安な要素があったんでしょうね。安心できる存在の人がそばにいてくれるってことはもしかしたらあったのかなと。不安材料としてあるかもしれないですね。

原島哲志 自分の(勤めている)施設の利用を勧めることは身近なんですけど、その人にとって合っているサービスや場所、スタッフ、施設があると思うので、(自分の)身内のサービスを利用していなくても、他のサービスを継続して利用できているのであれば、その人にとって良いんじゃないかなと考えていかないと。特に認知症のハンディを背負っていれば一つの所でまかなっていくのも大変になる場合もあると思います。


ケアプランセンター好日庵 介護支援専門員 堀江加奈枝 氏

堀江加奈枝 一つ聞きたかったんですが、先程の送迎事例で時間をずらす件なんですが、お願いする立場からするとデイサービス・デイケア側に他のご利用者様を多数受け持っているのにその人だけ2回、3回も対応してもらって、それが毎回だとすごく申し訳ないという思いがあるんですけど、どうお思いですか?

川瀬敦士 うらだての里は、そういったこと(送迎の時間をずらすこと)はやっていますか?


うらだての里デイサービスセンター 介護スタッフ 長谷川悦子 氏

長谷川悦子 やっています。違う車で行ったりとかですね。それで来てくれるならいいかなと。

川瀬敦士 できる範囲で2回行くということですよね。

長谷川悦子 はい。

川瀬敦士 何人くらい利用していますか?

長谷川悦子 一般型が34人で、認知症対応型が10人です。

川瀬敦士 約45名の方を8時30分から一日何時間以内でという(送迎の)リミットがあるわけですよね。

長谷川悦子 どうしても遅いと利用時間が短くなってしまいますけど、それでも来てくれるなら。

川瀬敦士 時間が短くなる時もあるということですね。川瀬クリニックはどうですか?

高橋芳雄 そうですね。川瀬クリニックの通リハでは樫の森、かわせみ合わせて60名のご参加を頂いていまして、その方々を10人乗りの車が4台と軽自動車2台でやっています。(計6台が送迎に出ているので)我々、介護の側から言うと2回でも3回でも迎えに行けますので、「自分のタイミングで来てくれる」と思っていただけるようにそのことを家族にお伝えして、心苦しく思わせないようにすることが我々の務めかなと思います。

川瀬敦士 わかりました。ありがとうございます。

 

‐事例から‐他の事例

川瀬敦士 他のケースで困っていることはございますか?

参加者 過去の事例ですが、本当にどんな対応をしても拒否が強くて布団から起きられない、また利用につながっても、利用中は良い顔をしていますが、家に帰ると夫にコップ、水、カバンを投げつける等、ご家族の精神的負担は大きいです。やはり対応だけではうまくいかず、主治医の先生にご家族から相談してもらう等、やはり内服調整も必要なところがあります。その結果、利用につながっているというケースがありました。

川瀬敦士 その点だと本日はお医者さんがいますので、その内服の対応について副院長お願いします。

川瀬裕士 そうですね。今回の送迎ではない場面でも、興奮や妄想、家族を責めたり暴力があったり、夜中に騒いで眠れないとか、そういったものがかなり酷い場合には薬、いわゆる鎮静的なもの、脳の働きにはちょっとマイナスになってしまうんだけれども、ずっと怒っている人であれば本人もやっぱり、それで幸せな状態とは言えないと思うし、もちろん家族も困っている状態なので、そのような場合にはご家族に十分、高齢者に薬を使うことのリスクを説明した上で、ちょっとずつ使うことになるんですけど、送迎の所だけに効果を発揮できるかどうかは中々、薬でも難しい。その人がただわがままなわけではなく、実はよく考えるとその人が言っていることも理にかなっている場合があって、本人がなぜ行きたくないかというところが見えてくると、だからダメだったんだという了解可能な理由があったりすることがある。それを見つけて対応していくのがまず最初の選択として考えて、どうしてもダメで暴言暴力になっちゃった場合にだけ薬を追加するという風には僕は考えています。でも必要な時はあると思います。

 

‐事例から‐ケース3【あいさつは大事】

高橋芳雄 迎えに行って、独居あるいは日中のみ独居の方に多い事例でしたけれども、乗車拒否されたとき、こういう対応したらうまくいったという例があったので挙げさせてもらいました。そう言われたときにスタッフとして「よっしゃ!わかりました。今日はお休みにしますけども、お仲間が車の中で待っていられますので、『またお会いしましょう』ということで挨拶だけお願いします。」という風に声をかけて、「そうなったらしょうがない」と車までは入って挨拶してくれるんですね。そして一度車に乗ったら先に乗っていられる方も「一緒に行こうよ」と声をかけてもらうと、ご本人も人の良さにつけ込む面があるんですけども、我々、介護スタッフは高齢者から見たら孫や子供の世代なんですけども、一緒の世代の方々、車に乗っている(同世代)方々から言われると「仲間がいるから仕方ない」という風に人のつながりをうまく利用するというのが、このケースの肝かと思います。

川瀬敦士 今のケースで質問ありますか?まず挨拶の部分ではハードルがそれほど高くないから、やってくれるんですね。あと、一歩目を踏み出すとその後、繋がりやすいですよね。

 

‐事例から‐ケース4【演技力(白衣)】

高橋芳雄 続いて、医者のフリをする、演技力が重要になってきますね。「この度は○○様、お待たせいたしました。ご予約の時間ですので、約束通りお迎えにあがりました。お車をご用意いたしましたのでご案内いたします。」と、白衣を着てやっておりました。元々、社会的地位が高かった方や、プライドの高い男性、あるいはセレブな女性など「なんでお前らの言うことなんか聞かなきゃいけないんだ。」と言うので、うまくいった例ですね。

川瀬敦士 このケースで何か感想、質問はありますか

長谷川悦子 私も迎えに行く時ではないんですけども、お風呂入るのを嫌ったとき、男の職員が医者の先生のような雰囲気を醸し出したら、お風呂入ったことはありましたね。

川瀬敦士 でも白衣、制服は、すごく効果がありますよね。着ているとき、着ていない時で反応が全然違うことがありますからね。

坂井美和子 外来でも白衣を着ていると言うこと聞いてくれることは多々ありますね。権威を利用するわけではないんですけれども、その人の真意をくみ取れるのかなとは思います。

川瀬敦士 だまし打ちみたいな形ですけれども、それで嫌な印象とかを持つ人もいるのか、どうなのか・・・。どうですか?


三条市福祉保健部高齢介護課 保健師 渡辺晃代 氏

渡辺晃代 聞いていて、なるほどとは思いましたね。権威を使うというのは変かもしれないんですけど、白衣を着ている方から言われると専門的な立場で専門家から正しいことを言われているという認識を受けやすいのかなと思って、この人が言うなら間違いない、信じてもいいかなという感想を持ちました。

川瀬敦士 そうですね。安心感がありますものね。どれだけ正しく伝わるかというのも大切ですからね。

 

‐事例から‐ケース5【ルーティーンを守る】

高橋芳雄 こちらのケースの場合は会社元社長でして、引退して認知症の症状が出始めてから、徒歩5分の道のりを毎朝、通うのが日課となっていました。それで通所リハビリ開始ということで、ご自宅に迎えに行ったんですけども「行かない、仕事に行かねばならん。」と断られていました。家族と相談して、毎日会社に行っていると聞きまして、仕事に行きたいんだったら行ってもらいましょうかということで、本人が会社に行ってから会社の方へ迎えに行ったんですね。そうしたら、すんなりと乗車してもらえたので、このケースで彼の中では会社に行くことが日課(ルーティーン)であって、そこにこだわりを持っていたようです。その人の生活リズムを尊重し、うまくいった例です。

川瀬敦士 何かこのケースで感想等、聞いておきたいことはありますか?前頭側頭型(認知症)の方だとルーティーンを崩さない対応というのが重要になりますか?

川瀬康裕 前頭側頭型(認知症)で比較的よく見られる傾向だと思いますが、それぞれの人に個々の習慣があるから、それを大事にするということは全員に当てはまることかと思います。

坂井美和子 この方は(始めの頃は)本当に拒否が強かったんですよね。先週、毎日来たっていう声も聞いたので、やはり一つはまれば参加できるのかなと思いました。

 

‐事例から‐ケース6【お好みスタッフ】

高橋芳雄 このケースは迎えに行っても「もう嫌だ、足が痛い」と何週も何週も続いて、基本的に女性スタッフが送迎スタッフになるので、音をあげたんですね。なので私が行きまして、私も介護経験が20年あり自信があったんですけども、あっさり撃沈しまして。ダメかと思って次の日に私よりもいい男のスタッフが行きましたら、あっさり連れて来れまして、これは何が違うのか?と。経験?、顔?、若さ?、体型?・・・ということで要するにその人が好むスタッフというのは、いると思うんですよね。女性の対象者なら男性スタッフ、男性の対象者なら女性スタッフ、どういう方が好まれるかですね。こちらは皆さんにいいようにと思って、やっているんですけども、やっぱり距離感というのは人それぞれなんですね。

川瀬康裕 ご指名とかあるのかな?この人が来てくれれば行くとかね。

原島哲志 これに限らず、何でもそうなんじゃなんじゃないかな。指名制度もあってもいいんじゃないかと思いますね。

本間友子 指名制度があっても施設側は対応できるんですかね?

高橋芳雄 極力します。よっぽど休みでない限りは対応しますね。それは一つのきっかけで、いずれは、いろんなスタッフが変われるようにはしますが。まずはきっかけで良い距離感が取れる人が対応するのが一番いいんじゃないかと思いますね。

参加者 そうですね、若い男性が迎えに行くと、「もうすんなりと行く」とおっしゃっていますね。

原島哲志 地位が高い方とか、お堅い仕事をしていた方は若い女性より、それなりの(落ち着いた雰囲気のある)方がお迎えに行った方が良い場合もありますし、やっぱり若い女性が好きな方は若い女性スタッフがお迎えに行った方がいい場合もありますし、いろいろでね。

 

‐事例から‐ケース7【相手の記憶に合わせて、初めて会う時のように丁寧に】

高橋芳雄 認知症の軽度の段階であれば、名前まではともかく、スタッフの顔は覚えて下さいますので、いつものように「久しぶり、今日も宜しくお願いします。」と元気に接するだけでも、問題はないのですが、しかし認知症が進行して、顔も覚えられない段階、ましてご家族の顔も認識できない段階になってくると、それは全くの逆効果になってくると思うんですね。なぜかというと初対面の知らない人が馴れ馴れしくしやがってと、警戒感が非常に高くなります。その場合は、相手の心、記憶に合わせて、常に初めて会う時のように丁寧に、こちらの名前を言って、納得してもらって迎えに行ってました。挨拶は「お久しぶりでございます、1週間ぶりです、樫の森の○○です。□□さん、今週もリハビリを一緒にがんばろうと思いまして迎えに上がりました。ご質問は大丈夫ですか?それでは準備が出来ていますのでよろしいですか?」というように、初めてのように説明を細かく、納得していただけるように、それを基本としていけばといいと思いますね。つい何人も送迎してしまうと、「どうぞ、行こう行こう」と言ってしまいがちなんですけども、そこはご利用者の状態をしっかりと把握した上で、一番良いやり方を選んでいかないといけないと思います。

川瀬敦士 まあ、積み重ねが当人からすると、なかったりするから、いきなり言われて「さあ行きましょう」と言われて不快な思いをする方もいるんでしょうね。

 

‐事例から‐ケース8【ごはんを食べに行こう】

川瀬裕士 家族送迎なんですけど、旦那さんが「鞄を持って、ご飯を食べに行くところ」という言葉をかけて、今も家族送迎で行っているという方です。この「ご飯を食べに行く」という言葉が本人にとって、どのような良い記憶に結びついているのかわからないんですけど、今の通所リハビリやデイサービスでご飯を食べて美味しかったという良い記憶が残っているのか、それとも自分が若いころに旦那さんと食事を食べに行ったっていう楽しい記憶が蘇って、「じゃあ、行こうかな」となっているのか。一応、今はこのやり方で参加することが出来ているという例です。ご家族がなんと言って本人に声を掛けるか?「ご飯を食べに行く」というのは昼食があるから嘘ではないんだけど、その言い方を「デイサービス(デイケア)に行くよ」と「~へ行くよ」って言ってもその単語の意味がわからないかもしれないし、逆にわからない言葉を言われて変な場所へ連れて行かれるんじゃないかっていう不安感をあおってしまうことになるかもしれない。

渡辺敏子 本人に説明するのに学校に行く思い入れがあると、集団で迎えのバスが来るんだ、それに乗ればいいんだという認識で、ショートステイのお迎えの時、「今日は学校のお泊り会があるから」と言うと、本人が「ああ、そうかそうか。」と言って、行く。また仕事に対して思い入れがある方だと、(仕事に行くというふうにすると)すんなりと行きますね。だからその人その人の想いがあって、生活歴を確認したりしながらやるとうまくいく。それに合わせて、この人は学校、この人は会社(というふうに)。この人は遊びに思い入れがあるんなら、遊びにいきましょうと、それぞれに合わせながらの対応ですね。

川瀬敦士 学校というと子供扱いになりがちですが、それでもいいんですね。

渡辺敏子 はい、学校(のケース)はありますね。大勢いるから、学校へ行くんだと。

川瀬敦士 その他、同じような経験がある方はいますか?


川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬康裕 氏

川瀬康裕 80歳くらいの人だと、学校に行けることが素晴らしい幸せで、人生において大事なことだったのかもしれない。シリアの難民の子供は逃げる時に家が全部壊されても、唯一、持っていくものが学校の卒業証書で、これさえあれば、どこへでも生きていけるから、それくらい価値があるからね。

川瀬敦士 学校は当時、そういった場所だったかもしれませんね。

 

‐事例から‐ケース9【好きな(得意な)プログラム】

原島哲志 その方にとって経験があったり得意だったりする部分を立てて、「いないと困るので、ここは是非お願いします。」と言って、講師として来てくださいというニュアンスでお伝えすると、うまくいく感じですね。

川瀬敦士 この方は生花の先生だったり、書道の先生だったりするんですか?

原島哲志 そうですね。いろいろですね。

川瀬敦士 その他に、ご本人の好みを聞いて成功した例はありますか?失敗した例でもいいんですが、何かありますか?

皆川尚久 そうですね、好きなことだから推し進めたりするということはあるんですけど、好きがゆえに年とともに(以前のようには)できなくなった自分がいるのは、良い面ではプラスになるんでしょうけども、逆に年を重ねた中で、そのフレーズを聞きたくないという方もいますので、そういう言葉を使う時は、個人の能力、認知機能など、(現在の)その人ができそうかそうでないかというのを判断した中で、声をかけた方がいいと思います。こういった言葉もいいと思うんですけど、裏づけとなるこの人ならこの言葉は「大丈夫」というところがあった中で声がけしたら良いと思います。

 

‐事例から‐ケース10【一度あきらめる 時期を見計らう】

川瀬裕士 (本人は)「家事や庭仕事があるから」「行っても話が合わない」と言っていて、家族からも、あんまり強く言うと逆に意固地になってしまう性格なのでと言われて、今は時期を見計らっているケース。本人が嫌だと言っているときに、あんまり強く言い過ぎると逆に良くないので、一度引いて、時期を変えて、行ってみるといいかもしれない。その時期を変えるというのは何ヶ月先、何年先じゃなくて、次の日、または数時間後に行ったら気分が変わっているかもしれないので、一度引いた事によって良い印象を与えて、「聞く耳を持っている人」という布石になるようです。

 

‐事例から‐ケース11【気になることを解消 手伝えることは手伝う】

原島哲志 これは結局、行きたがらない理由を解消してしまえば行ってくれるのかなと思い、洗濯が終わってないなら洗濯して、じゃあ行こうと言ったら、今度は風呂の掃除をしんばならないと言ったので、全部磨いて、それを終えてから連れてきましたね。これは連れてくるまでに40分くらいかかりましたね。

川瀬敦士 それは何回かあったんですか?

原島哲志 ここまでかかったのは、この1回でしたね。

川瀬敦士 ここまで待ってもらえると信頼してくれるかもしれないですね。

皆川伊砂子 女性はやっぱり洗濯が気になるもので、手伝っていきます。「脱水したままだよ。」「帰ってきたら大変だよ。」って声かけると「そうだね。」って言って、干すのを手伝っていくと来てくれたり。あと、いつも来てくれる方でどうしても行きたくないと言って、尋ねたら一緒にいるお子さんが失禁、便が出ていて、洗ってきた覚えがありますね。やっぱり理由があるんだなと、全部には対応できない部分もありますけど、なるべく気持ちよく、心残りがないように家から出て来られればいいなと、お話は聞きますね。そうすると真意がなんとなくわかってくる時がありますね。

川瀬敦士 聞いて答えてくれる人にはなるべく、できる範囲でやっていきたいですよね。

原島哲志 中には「除雪が終わってないから出られない」が多いです。その時はキレイにやっていきますね。

 

‐事例から‐ケース12【訪問リハビリから】

川瀬敦士 訪問リハビリから通所へ移るパターンが何件かあって、やはり短い時間でデイまで繋げるのは難しくて、訪問リハビリを半年、1年やっていく中で、だんだん関係が出来てくると、(通所の意義など)その人が理解していただけるような説明をしていきます。

皆川尚久 毎週訪問リハビリ行っていた方で、「『大人の学校』に行って、ちょっと学んでくるとか、働いている職員の方々に経験談、人生談とかを話してきてくださいね」と伝えたケースもありました。結果デイサービスに行かれるようになったケースもありました。

図2 : 介護サービス利用拒否に役立つ実践介護テクニック

・事業所を替える
・時期を見計らう
・訪問リハから導入
・訪問看護から導入
・外来リハから導入
・医師から説明
・自宅近く
・家族送迎から
・迎車時間変更
・一回りしてから再度
・別の場所へ迎え
・好きなプログラム
・お好み(異性)スタッフ
・ルーティーンを守る
・ご飯を食べに行こう
・大人の学校(会社)に行こう
・あいさつしてもらう
・専門家(白衣など)
・いつも初めまして
・気になること解消(洗濯・除雪)
・食事代

 

感想

川瀬敦士 最後に一人一人、感想を聞かせて下さい。


川瀬神経内科クリニック
左から 原島哲志 氏(介護スタッフ)、高橋芳雄 氏(介護スタッフ)
皆川尚久 氏(作業療法士)、川瀬敦士 氏(作業療法士)

皆川尚久 他の施設で入浴拒否があった時に一つのツールとして白衣を着るなり、先生に診てもらうなりするのが良いなと、思いましたね。ありがとうございます。

高橋芳雄 今日はいろいろ実践のテクニックが出ましたけども、拒否する理由は様々なんですが、でも実は仮の理由で、認知症の方々は思い通りにならなくて、不安になって、その不安の表現が「用事がある」、「行きたくない」、介護拒否に繋がっているんですね。我々スタッフからすると、いかに良好な関係を利用者さんと築いて、本音を聞き出すあるいは推察するようにしていくことが問題行動に対処する一つのポイントなんじゃないかと本日、感じました。ありがとうございました。

原島哲志 我々の現場の話をするのは、あまりないんですが、結局なんでここまでするんだろうということですよね。施設に来てもらうために何度も迎えに行ったり、いろんなテクニックを使って、来てもらったりするんですけれども、やっぱり最終的には認知症予防のために来てもらえればそれで良いということ。また家族にしてみれば、介護のプロだと思われているので、結果を出さなくてはいけないのかなと思います。「家でお風呂に入らないのでお願いします」と言われたら、我々がお風呂に入れて返さなければいけないのかなと。1回目で入ってもらわなくても、例えば1週間後、1ヶ月掛かっても最終的に気分よくお風呂に入れておくことができて、家に笑顔で帰っていただけるのが我々の役目じゃないかと思います。ありがとうございます。

土田友美 今日はありがとうございました。いろんな意見が聞けて、明日からいろいろ試してみて、認知症の人に対して、いろんなことを考えて、仕事をしていこうと思いました。


はあとふるあたごグループホーム三条 介護スタッフ 德長英人 氏

德永英人 今日、色々な事例が出たんですけど、やっぱり、その人のペースに合わせるのが一番大事かなと勉強になりました。入浴拒否の方もいらっしゃるので、時間を空けたりとか、白衣を着てやってみるのも一つの手かなと思いました。ありがとうございました。


愛の家グループホーム三条上須頃 ユニットリーダー 堀川麻里奈 氏

堀川麻里奈 話を聞いていた中でその好きなことの中で、レクとか目を向けがちなんですけど、やっぱりできる人に支援をするのはプラスに繋がるかもしれないんですけど、だんだんと目も悪くなったり、自分の思うようにできないことを「好きだったよね」と勧めるのは逆効果かもしれないという話を聞いて、ちょっと勉強になったところと、一番大事にしなきゃいけないのは、私達スタッフ目線の一日の流れで、その人を支援するんじゃなくて、それぞれのペースがあって、それを邪魔されるのは嫌だと思うので、そこを気を付けながら支援をしていきたいと思いました。ありがとうございました。


愛の家グループホーム三条上須頃 介護スタッフ 長谷川恭子 氏

長谷川恭子 今日はありがとうございました。最初はデイケアに行きたくないという話があって、グループホームと違うかなと思っていたんですけど、行きたくないという理由で、グループホームからしてみれば入浴拒否、外出拒否に繋がっていくことなのかなと事例を聞いて考えることがありました。お風呂の話で、裸になったら入ってくれると思っていて、言葉巧みに服を脱がせてもらったんですけど、服を脱いだ瞬間に入らないという感じで、結局服を着せてしまったことがあったので、またホームで話し合いながら支援していきたいと思いました。

参加者 いろいろな具体的なお話を聞かせてもらって、本日はありがとうございました。利用者様に笑顔がみられ、生活の質があがるよう、今後も医療、各サービス事業所と連携して支援していきたいと感じました。

渡辺敏子 私なりにいろいろとやってきたんですが、事例を聞く中で本人、家族の想いをしっかり受け取るのが大事であり、言葉がけ一つでも、それだけその人に合ったものにすることで穏やかに過ごせるんだなと、すごく勉強になりました。今日はありがとうございました。

堀江加奈子 このぐらいの人数で話しやすい雰囲気でいいなと思いました。ケアマネージャーとしては、いろいろ考えて、試してくださってありがたいというのが感想です。次回があるなら、どんどん若くなっている認知症の方の色々なケースを話し合える場があるといいなと思いました。ありがとうございました。


三条市福祉保健部高齢介護課 保健師 本間友子 氏

本間友子 なかなか現場で起きていることとか、実際に今仕事をしていて、聞く機会がなかったので、みなさんの話を聞いて学生に戻ったような感じがします。行きたくないという一言には、いろいろ理由があって、今までその人が暮らしてきた背景には、どのような教育を受けてきたとか、どのような思考あるのかとか、まずその人の事を理解しなきゃいけないし、理解するためにも興味を持たないといけない、その人らしく尊厳を保ちつつ、対応しなきゃいけないと改めて感じて、初心に戻ってありがたかったです。ありがとうございました。

渡辺晃代 今日はありがとうございました、サービスの利用で初めて行くということは不安が強いと思うのでその点でご本人の気持ちだったり、生活歴を踏まえて、こんなに丁寧に対応してくれていたんだなとすごくよくわかりました。そこまで時間を割いてくれているのは事業所にしてみたら、すごく大変だろうなという思いがあったり、遠慮があったのかなとも思ったり、話し合いの中で同じ声のかけ方をしていくんじゃなくて、ここっていう力の入れ具合、丁寧な関わりというのをきちんと知ってしまうと見えてくる部分もあるんだなとすごく勉強になりました。医師の先生がいる相談の場というのがなかなかないので、すごくありがたく、続けていただければと思いました。一人の事例だけじゃなくて、利用拒否の切り口からいろいろなパターン、アイデアを聞けたのでいいなと思いました。

相場優子 私が体験した事例で、男性で半日デイを利用していたんですけれど、来月から急に行かないと言い出して、頑固な方なのでご家族からも無理強いすると怒るからと様子見ていたんですけど、いろいろ聞いていると半日のデイはオープンしたばかりで利用者さんが少なかったんですね。その人が行くといっぱい優しく受け入れられたんですけど、だんだん利用者さんが増えてきくると自分に掛けてくれる時間が少なくなってしまって、その点でひがみ、寂しさなどがあり、やめられたんだなというのがわかって、その人その人にちゃんと理由があって、拒否感が出るんだなと改めて思いました。またいろいろなケアプランするにしても、やっぱり上から目線というか、「してやるんだ」という気持ちにだんだん強くなり、相手の気持ちを考えて尊重したりして認知症だからじゃなく、一人の人間として当たり前に尊重していく大事なんだなと改めて思いました。どうもありがとうございました。

神保由貴 いろいろな話、事例を聞かせていただいて、利用拒否だけじゃなくて、デイで、入浴拒否だったり、自宅欲求が強い方だったりが多くて、そういうことにも応用できそうな事例やお話を聞かせていただいたので、これから実践できればと思います。ありがとうございました。

長谷川悦子 今日はありがとうございました。デイサービスでは認知症の方がいっぱいいますけども、対応方法を今日の話を聞いて、いろいろと調整してみてちょっとでもデイサービスが楽しかったなというのが残ればいいかなと思いました。

庄司俊彦 その人に合う場所、好みの場所、皆さん自分の施設に自信を持ってやっていると思うんですけど、そこに定着してくればベストなんですけど、そうじゃない時はこの方は別の場所の方が向いてるんじゃないかとか、デイケアじゃなくてデイサービスの方がいいんじゃないかとか、他をお勧めしたり、お勧めされたりするような関係に繋がっていけば一番いいかなと聞いて、参加させていただきました。ありがとうございました。

川瀬神経内科クリニック 看護師 坂井美和子 氏

坂井美和子 私は日頃、外来で患者さんに関わっているんですけども、サービスが必要な方に先生から勧めてもらっているんですが、本人の意向もあるんですけども、ご家族は「本人が行きたがらないからいいです。」「行けません。」という声がたくさんあるんですけれども、「とにかく出してください。うちはスタッフがしっかりサポートしますし、上手に導いてくれますから」と言って、参加してもらって、改めて皆さんの介護現場の素晴らしさがわかりましたので、外来でも家族、本人に伝えて、サービスがとても良いものだと伝えて行きたいと思います。ありがとうございました。

皆川伊砂子 皆さんのいろいろな話を聞いてですね、私たちは会員さんと呼んでいるんですけど、利用する方の良いところを見つける、その人を好きにならないと心を開いてくれないんじゃないかなというのを感じながら、聞いていました。いつでも初めての気持ちで接することができるように、心が穏やかになれるようにはどうしたらいいのかなと思いながら聞いていました。また今後参考になる意見が出ると思いますので、お聞かせください。ありがとうございました。

川瀬康裕 本当に今日はありがとうございました。どのくらい気づく力と自分が持っているポケットがいっぱいあるかということに尽きると思いますし、おそらく、今日集まった方々は自分の体験があると思うし、なるべく皆さんがいろんな話ができるような話題を選んでいきますので、次回の予定ができましたら、ご案内しますのでまた御出で下さい。

川瀬敦士 本日はどうもありがとうございました。