お問い合わせ

0256-33-9070川瀬神経内科クリニックへ繋がります。

認魂レポート

第5回テーマ : 排泄の問題にどう対応するか?   

参加者:
【介護職】内山千鶴1) 佐野麻子2) 高橋芳雄2) 原島哲志2) 船越麻美3)
【訪問介護員】山﨑眞代4)
【介護支援専門員】石附克也5) 石丸祐子6) 佐藤光美6)
【グループホーム管理者】高野栄子7)
【作業療法士】川瀬敦士2) 皆川尚久2)
【看護師】坂井美和子2) 三須恵美子8)
【営業職】須田真治9)
【医師】川瀬康裕2) 川瀬裕士2)

介護職・訪問介護員・グループホーム管理者・・・以下「介」
介護支援専門員・・・以下「CM」
作業療法士・言語聴覚士・・・以下「リハ」
看護師・・・以下「看」
営業職・・・以下「営」

1)はあとふるあたごデイサービスセンターさかえ(以下「デイサ」)
2)川瀬神経内科クリニック、通所リハビリ樫の森・かわせみ、サービス付き高齢者向け住宅かえるハウス
(以下「川瀬」)
3)特別養護老人ホームおおじまの里(以下「特養」)
4)ジャパンケア加茂訪問介護事業所(以下「訪介」)
5)ケアプランセンターさんじょう社協(以下「居宅A」)
6)居宅介護支援事業所 長和園(以下「居宅B」)
7)グループホームふれあいの杜三条(以下「GH」)
8)燕労災病院(以下「労災」)
9)ユニ・チャーム(以下「ユニ」)

 


 

川瀬敦士(川瀬・リハ) 只今より第5回川瀬神経内科クリニック認知症疾患医療センター認知症研修会「認魂」を開催いたします。本日、司会進行を務めさせていただきます川瀬神経内科クリニック作業療法士の川瀬敦士と申します。どうぞ宜しくお願い致します。それでは開会挨拶を副院長の川瀬裕士よりお願い致します。


川瀬神経内科クリニック 作業療法士 川瀬敦士 氏

川瀬裕士(川瀬・医師) 今日はお忙しいところお集まりいただきありがとうございます。初めての方や前に来られた方もいらっしゃいます。ホームページで今までの認魂のレポートを読んでこの会のことを知っている方もいるかもしれませんが、改めてこの研修会の目的を一言で言うと「認知症のケアの質を上げる」ことです。同じ地域で認知症に関わる仕事をしている人が集まり、ちょうど今ここに皆様に集まっていただいたように、認知症のケアに関する様々な問題を話し合い、認知症の人の心の理解を深め、より質の高いケアができるようになる事を目的にしています。一人の認知症の患者様ということで考えますと、まずどこかの病院に行き、その後、様々な介護サービスを利用していくことになります。この地域に住んでいれば、その方は皆様のそれぞれの施設にいろいろな形で関わって行くと思います。一つの施設だけでレベルを上げるのではなく、なるべくたくさんの経験を集めて、もっと良い方法はないかと皆で考えて、地域全体の連携を良くしつつレベルを上げていければと思っています。今回は「排泄問題にどう対応するか」をテーマとしました。前回の食事問題と同じように避けては通れない問題です。そして今回はスペシャルゲストをお呼びしております。看護師の中でもいろんな資格がありますが、今回は排泄看護のプロとして皮膚・排泄ケア認定看護師をお呼びしております。燕労災病院の三須さんに来ていただきました。いろんなことを聞いたり、ご意見を言ってもらったりできればと思います。それと皆さん普段からおむつを使っていると思いますので、今回は特別にユニ・チャームの須田さんもお呼びしております。何か要望があれば言っていただいたり、使い方が間違っているのであれば正しい使い方など教えていただいたりできると思います。よろしくお願いします。


川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬裕士 氏

三須恵美子(労災・看) 皮膚・排泄ケア認定看護師の三須です。私は今病院の中では褥瘡管理ということで、褥瘡を起こさないことで管理をしておりますが、ストーマ*1外来をやっていますし、排泄ケアもチームを数年前から立ち上げて、失禁をなくす、急性期で入る尿道カテーテルを早めに抜いて自立に向けるという動きをしています。便失禁や認知症に絡んできますので役に立てるか不安ですが宜しくお願い致します。

*1 ストーマ: 腹壁に造られた便や尿の排泄口のことを人工肛門・人工膀胱といい、人工肛門・人工膀胱のことを総称してストーマといいます。


燕労災病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 三須恵美子 氏

須田真治(ユニ・営) 紙おむつメーカーユニ・チャームの須田と申します。新潟県を担当しております。宜しくお願いします。私どもはリハビリパンツという商品を基に、最後まで自分で排泄できる、そういった介護を目指しております。皆さんと共に寝たきりにならない、自分で最後までおトイレに行けるような、紙おむつでお手伝いできればと思い本日参加させていただきます。宜しくお願いします。


ユニ・チャーム株式会社 営業本部・プロケア営業 須田真治 氏

川瀬敦士(川瀬・リハ) まず排泄問題の現状をまとめますと、このようなことが考えられます(図1)。そして排泄問題に対応することの意義としてはこのようなことが考えられるかと思います(図2)。また本人や介護者の気持ちにも触れていきたいと思います。排泄の問題に関して本人の声・気持ち(図3)、また介護者の声・気持(図4)としてこのようなことが考えられます。

図1 : 排泄問題の現状

・不適切な排泄行為は、本人の衛生状況を悪化させる
・本人の不快感や苦痛の原因になる
・介護者や介護者を介した感染リスクを増大させる
・臭いなど周囲の環境を悪化させる

 

図2 : 排泄問題に対応する意義

・衛生面の改善により、本人や他者の感染症のリスクを減らすことができる
・本人の身体的・精神的な不快感や苦痛を緩和できる
・気持ちよい環境を維持できる

 

図3 : 本人の声・気持ち

・トイレの場所が分からない
・トイレの使い方が分からない
・便の意味が分からない
・排泄の失敗をしたくない、見せたくない
・常に尿意を感じる
・お腹が張っている

 

図4 : 介護者の声・気持ち

・トイレではないところで用をたす
・着衣の上げ下げが不十分で衣服が汚れる
・便器の使い方がおかしい、汚す、壊す
・便を壁や衣服などになすりつける
・便秘により不機嫌になる
・頻回の尿の訴えがあり困る
・介助しようとすると怒る

 

ここから実際の事例を紹介していきます。最初の事例は内山さんからお願いします。

 

排泄のタイミングが分からない,便による汚染・皮膚トラブル

内山千鶴(デイサ・介) 排泄の声かけに対しての理解ができていない方で、便座に座るまでの行為になかなか時間がかかり、トイレまで行くのですが何もせずに帰ってきたりとかします。家族はトイレで排泄を行ってほしいという希望がありますが、なかなかできていないことが多く、声掛けの工夫の仕方とかを教えてほしいと思います。また介護度5の方が何人かおり、その中でハルンバックをしている方の排便の後の拭き残しが結構あり衛生的にも良くないと思い、皆さんどのように対応しているのか聞きたいと思います。


はあとふるあたご デイサービスセンターさかえ 介護職 内山千鶴 氏

川瀬敦士(川瀬・リハ) 大きく二つのことがあり、一つ目は言葉で表せない方の排泄のタイミングを知る方法についてですね。普段認知症の方を見ている施設の方に聞きたいと思います。高野さんのところではどうですか?

高野栄子(GH・介)おトイレとか、実際の言葉も理解できないのでしょうかね。


グループホーム ふれいあいの杜三条 グループホーム管理者 高野栄子 氏

内山千鶴(デイサ・介) そうです。今は理解できなくなってきています。動き始めたりしますが、動き始めるタイミングで行っても、なかなか排泄につながらず、結構拒否があり、まったく別の言葉を言われてしまいます。

川瀬敦士 (本人の出す)サインということでは、デイケアの樫の森ではどうでしょうか?

高橋芳雄(川瀬・介) サインとしては「そわそわ」、「もぞもぞ」が確かにありますね。あるいはこちらの問いかけに対して、返事が散漫になったりするとそれがサインだと思うこともあります。あとはサイクルを知ることだと思います。その方にもサイクルがあると思うので、介護の仕事は記録の仕事で、その強みを活かし、サイクルを知っていくことは必要かと思います。


川瀬神経内科クリニック 介護職 高橋芳雄 氏

川瀬敦士 サイクルとは具体的にどのようなことですか?

高橋芳雄 やはり細かい記録を見ることです。私たちは通所なので、朝お迎えに行ったりしますが、その際に、何時ごろお手洗いがありましたか?とまずスタートを聞くことです。

川瀬敦士 そしてもう一つ、ハルンバックの使用の方で、これについては三須さんにお聞きしたいと思います。

三須恵美子(労災・看) 当院ではまず1日1回必ず陰部洗浄をやっています。排便ですと、特に女性だと前のほうに潜り込んでしまうので衛生的にはボトルを使用して微温湯で洗い流すことが良いと思います。石鹸はその都度つけなくてもいいですが、1日1回は石鹸で洗います。あと頻回に出る便については洗い流す、そして押し拭きをする。こすって拭くのは絶対にそのうち、びらんになったりと、皮膚トラブルの元になりますので押し拭きをするのが一番ベストかと思います。

内山千鶴(デイサ・介) ボトルで流すだけだと取り切れない場合があって、あまりこすりすぎるのも良くないし・・。

三須恵美子(労災・看) そうですね、こするのは非常に良くありません。

内山千鶴 入浴後だったりすると、もう一度お風呂というのは難しいですし・・。

三須恵美子 当院ではおむつを敷いて、ボトルを使って洗い流すようにしています。その際、布とかだと、こすれてしますので、プラスチックグローブを(手にはめて)使って優しく指で洗うようにしています。プラスチックグローブは摩擦が軽減できるので良いと思います。ティッシュや布等でこすり取るという感じは良くありません。先ほどの排泄のところで、サイクルのお話がありましたが、当院では排尿日誌をつけています。よく観察し、その方のサインを見抜いて誘導してあげて、タイミングよく出た時間が何時なのかを日誌的に記録します。だいたい3日間つけるとパターンが分かってきます。そのような方法も良いと思います。

 

おむつ交換の抵抗・拒否,おむつやパットを自分で外す

川瀬敦士(川瀬・リハ) 次の例にいきます。船越さんお願いします。

船越麻美(特養・介) 男性の方でよく寝ている時におむつを変えようとすると怒って抵抗してしまうので、起きてから交換しています。男性職員に対してすごく暴力的で、近くを通るだけでも怒ったり手を上げたりしますので女性だけで対応しています。

川瀬裕士(川瀬・医師) この方は排泄以外の介助では怒ることはありませんか?


特別養護老人ホームおおじまの里 介護職 船越麻美 氏

船越麻美 あります。男性が近くを通るだけで怒ります。

川瀬裕士 排泄だけじゃなく、体に触るような介助は怒るのですね。

川瀬敦士 石附さんどうでしょうか?どんな気持ちでしょうかね?嫌がる男性の気持ちは。

石附克也(居宅A・CM) おむつだけじゃなくても、男の人に触られるのが嫌なのか、女性だったらまだいいのかな。男がそういう介護をするものじゃないと思っているのかもしれません。


ケアプランセンターさんじょう社協 介護支援専門員 石附克也 氏

船越麻美 息子さんと仲が悪くて、息子さんが来るとすぐに喧嘩になりますので、男性はだめなのかと思いました。

石附克也 排泄は特に嫌ですよね。一番弱い部分をさらけ出す訳ですから。女装でもしますか?

船越麻美 女装は前にいた施設で試してみたようですが(本人は)分かるみたいですね。

川瀬敦士 では今は女性だけで対応しているのですね。

石附克也 寝たきりですか?

船越麻美(特養・介) 片麻痺で車いすです。トイレは1日1回、女性が対応して行っています。

川瀬敦士(川瀬・リハ) (怒っている時は)どんな訴えですか?

船越麻美 失語で話せないので、すぐに手を出してしまいます。話せる状況ではありません。

石附克也(居宅A・CM) 男性が嫌いな理由というのは?

三須恵美子(労災・看) 認知症の方は、過去に嫌な思いをしたことはよく覚えています。当院でもよくありますが、触る時こちらは言葉をかけてやったつもりだけど、触り方が強烈で怖かった経験をしていると、その男性はもう嫌になってしまいます。触り方とか声のかけ方とか、そういうところではないでしょうか?そういう経験をしているので、非常に拒否するのでは?

川瀬敦士 触り方でいうならば、女性でも荒っぽい触り方をする人もいるかもしれませんね。

川瀬裕士(川瀬・医師) 排泄に限った問題ではなくて、介護する人が男性・女性、どちらがいいいかという問題が一つあると思いますが、他に気になる点として、この方は「(おむつを)わざと外す」ということもあるようです。これはどういうことなのでしょうか?付け心地が嫌なのか、濡れているから嫌なのか?それをなくしてくれればだいぶ良いのではないかと思うのですが。おむつは関係があるでしょうか?なぜ外すのか?外す人っていますよね?

高野栄子(GH・介) 女性の方ですが、パットの中をちぎって散乱させることがあります。でも毎回ではありませんので不快なのかと思って、交換したり、逆にパットを外したり、声掛けをしてトイレへお連れしたりするような対応をとりました。やはり不快感があるのでしょうか?

原島哲志(川瀬・介) パットを抜いてしまう方はいます。暑いのかなと思います。頻回ではありませんので、気温が上がった時や暖房の温度がちょっと高い時になることがあります。


川瀬神経内科クリニック 介護職 原島哲志 氏

川瀬裕士 やはり(おむつを自ら外すというのは)不快感がベースにあるのか・・?

川瀬敦士 変えようとする努力の表れなのかもしれません。この方は少し違いますが。(おむつの)外し方も引きちぎるような外し方なのか、それともきれいに外すのか?どうでしょうか?

船越麻美 おむつを開けて、おろしています。

原島哲志 暑いかもしれませんね。サ高住かえるハウスにも全部脱いでいる方がいます。

三須恵美子 不快なのかもしれません。不快だから取る。

原島哲志 かゆみがあるとか。

川瀬敦士 言語の問題があるから、そういうことを訴えられないかもしれませんね。

川瀬裕士 確かに何かがあれば、しゃべれる人であれば訴えているかもしれません。

三須恵美子 結局この方は、尿意はあるけど訴えられないかもしれない。とすると、おしっこが出たのは、わかるので、そうしたら脱ごうという感じなのかもしれない。

川瀬敦士(川瀬・リハ) そこが解消されれば、男性でも(介助が)できるようになるのかもしれませんね。

川瀬裕士(川瀬・医師) この方はもちろん認知症もあって、言語でのコミュニケーションとかは難しいのですよね。

川瀬敦士 何が原因で脱ぐのかというところをよく見ていただいて。何か訴えているものをよく見ていただいて。

石附克也(居宅A・CM) 蒸れているのか、出ていて不快なのか、当て方が悪く何かチクチクするのかをよく観察してください。

川瀬裕士 今のリハビリパンツの性能はいいのではないですか?

須田真治(ユニ・営) こちらの方はテープ止め(おむつ)ですか?

船越麻美(特養・介) はいテープ止めです。

須田真治 男性はトランクスで育ったか、ブリーフで育ったか、つつまれると圧迫されるのが嫌だという場合もあります。(パットを)抜くのであればパットを入れないで、テープ止めあるいはリハビリパンツ1枚で過ごしていただくのはどうですか?いろいろと試していいただければと思います。

川瀬敦士 パット使用をやめてリハビリパンツのみに変えることですね。

須田真治 そうですね。リハビリパンツはもちろん吸収力が200ccのものからあるいは一晩安心な1000ccのものまで、同じパンツでも何種類かあります。パットを入れてつつまれるのが嫌ということであれば、逆に入れないでパンツだけで対応すればよいと思います。

川瀬敦士 量の面では対応できるということですね。

須田真治 またテープ止めのパンツも700cc~800ccまでありますので、あえてパットを入れないで1枚で過ごしていただくのもありだと思います。

 

便失禁の対応

川瀬敦士 それでは次に行きたいと思います。Iさんお願いします。

Iさん(訪介・介) (自宅で時々便漏れがあり家族より着替えの依頼あり)この方ですが、認知症が進み、さらに悪くなってしまいまして、今現在は下着を交換することに拒否はありませんが、便意がなくなりまして、それの処理をご自分でされてしまって、ヘルパーの訪問した時に大変なことになっているという状況です。またデイケア樫の森さんも利用されています。

川瀬敦士 便意はない。汚れたことには気が付き、自分で処理をしてしまう。

Iさん 最近は誤食が始まってしまって、冷蔵庫を開けて調味料とか湿布とか、あたりかまわず食べてしまいます。

川瀬敦士 動ける方ですか?

Iさん 動ける方で、今は要介護4です。

川瀬敦士 動けても便意がなくなる方がいるのですね。

川瀬裕士 認知症だけがかなり重度なんですね。

三須恵美子(労災・看) ただ84歳なので高齢になってくると肛門括約筋は確かに緩んでくることはありますが、直腸癌がないかとか、もしくは直腸に便が詰まって脇から便が出ることもあるので、その辺は何か疾患がないかどうか調べてみてはいかがでしょう。あとは直腸に便がたまっての便秘ではないのかとか。それだったら指を入れればすぐにわかりますが、認知症であればあまり体を触らせてくれないですよね。

Iさん(訪介・介) 今拒否はなくなって、着替えとか排泄処理はできている状態です。

三須恵美子(労災・看) それなら看護師が直腸診できるので、いきなり指を入れるとびっくりして肛門が閉まってしまうので、指を入れる時は肛門をタッピングして肛門が緩んだ時にゆっくり指を入れて、そこで便の固いものが詰まっていないかとか、指の触れるところで腫瘍とか確認して、それがなければ、あとは括約筋が緩んでいるのかと思います。この方に骨盤底筋運動してくださいと言ってもできないですしね。

Iさん 運動ですが、この方は1日中動いている方です。

川瀬敦士(川瀬・リハ) トイレに行くことも忘れて1日中歩いているのですね。

三須恵美子 便が出るのは普通に出るのですか?それともちびちび出るのですか?

Iさん 普通の量で、すこしゆるい感じで出ています。またャラメルを1日に5箱位食べています。糖尿病もあると思います。

川瀬敦士(デイケア) 樫の森での様子はどうですか?

高橋芳雄(川瀬・介) 今日も参加されていました。要介護4ですが、歩行面は自立している方です。トイレの問題もある方ですね。認知症ですから、その方にとっては初めてトイレで失敗してしまったという思いがあるので、声掛けも上手にやらないと拒否すると思います。皆さんもトイレで失敗してしまったら、どう思うか考えていただければと思います。私だったら隠しますね。やっちゃった、誰にも知られたくない、トイレに流してしまえ、タンスの奥に隠してしまえ、となります。あるいは家族やヘルパーさんや我々のような介護士が「トイレに行きましょう」といっても、「何言ってんだ。俺は大丈夫だ!」「余計な事言うな!」と怒ってしまいます。ですので、どういう声掛けをしたら、「あー助かった」、「ありがたい」と思っていただけるかを考えるべきだと思います

川瀬敦士(デイケア) 樫の森では拒否はしていませんか?

高橋芳雄 以前からそんなに拒否はしていません。誘導してどうぞという感じです。

川瀬敦士 サインがあるのですか?

高橋芳雄 サインまでは気づきませんでしたね。

三須恵美子 そちらでは便失禁はないのですか?

高橋芳雄 ないことはないですが、さほど問題だと思うことはありません。

川瀬敦士 便意はあまり感じていないのかな。

高橋芳雄 そうなので臭いがするなと思って、その方かなと思って、誘導したりしています。

川瀬敦士 トイレに行けば替えさせてくれるのですね。

高橋芳雄 その時も声掛けのコツがあります。

川瀬敦士 あとはそれを自分で解決しようと思って汚してしまうことはありましたか?

高橋芳雄 樫の森ではそういった行為はなかったですが、やはりご自宅ではあったようです。

川瀬敦士(川瀬・リハ) ある程度、間を空けずに声掛けすればいいのですが。便意がなくても不快感がずっと続けば替えたくなる思いが出てくるかもしれません。

高橋芳雄(川瀬・介) その方に関しては臭いで気づいた時に、こっそりと「私しか気が付いていませんよ、今のうちにサッと替えれば誰にも気づかれませんよ。」と声掛けすると、スムーズに替えることができました。

川瀬敦士 佐野さんも(デイケア)樫の森でこの方に関わっていますか?

佐野麻子(川瀬・介)ご家族の方も排便のことに関してはすごく気にされています。しかし(デイケア)樫の森の中では他の方よりもずっとスマートな方です。しかしプライドの高い方ですので、例えば先ほど話のようにキャラメルをすごく召し上がるので歯がほとんどなくて。歯磨きにお誘いする時にも気を使います。誘い方一つだと思います。


川瀬神経内科クリニック 介護職 佐野麻子 氏

川瀬敦士 ご家族様というのは?

Iさん(訪介・介) 息子様です。息子様からの要望でヘルパーさんが入った夕方に必ず下着の確認をして下さい、ということでそこから依頼がありました。

三須恵美子(労災・看) 例えば便をゆるくする薬を飲んでいることはありませんか?

Iさん 便秘と下痢を繰り返す方で、下痢の時にはご家族の依頼でお薬を1錠飲ませています。

三須恵美子 便がゆるいと、もしかすると漏れていて。もうすこし固めにして、皆さん失禁は嫌なので、いっそのこと、例えば座薬を入れて一気に出してしまうとか。

川瀬敦士 この方はスマートにトイレに行ってくださる方なので、声掛けの仕方やタイミング、もしくは薬のコントロールなどで少しいい方向に進みそうですね。

 

トイレではない所での排尿

川瀬敦士 続いては高野さんお願いします。

高野栄子(GH・介) トイレ以外の場所で排泄してしまいます。トイレの場所が分からないことが原因です。居室は出たらすぐにおトイレに行ける場所にありますが、お昼頃や夜間にトイレ以外の場所で頻回ではありませんが、排泄をしてしまうことがあります。居室内の押し入れに排尿したりします。

川瀬敦士 声掛けをすることによって回数は軽減しているのですね。

高野栄子 そうですね、声掛けで居室以外の場所での排泄の回数は減っています。排泄のパターンを記録で把握して声掛けをしています。夜間帯にも声掛けをしています。ただ、押し入れの暗いところによくおしっこしてしまいます。

石附克也(居宅A・CM) やっぱり男としては立ちションをしていた年代ですから、やるのであれば暗いところでするのではないでしょうか。

三須恵美子 年齢はいくつぐらいの方ですか?

高野栄子 80歳くらいです。

三須恵美子(労災・看) その年代の方ですと、昔のトイレは家の奥の暗い所にありますから、そのせいではないのですか。

高野栄子(GH・介) 施設のトイレだと明るくてすごく清潔感がありますから。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 教科書的には電気をつけておきましょう。照明は自動でつくようにしておきましょう。と言われていますけれども。

三須恵美子 この方の場合は昔の記憶が残っているのでしょうね。

高野栄子 お散歩とか行くと必ず(立ちションをします)。

川瀬敦士 トイレはお部屋の中にあるのですか?

高野栄子 お部屋の中には無いんです。

川瀬敦士 トイレとお部屋の距離はどのくらいですか?

高野栄子 2,3歩で行ける、すぐそこにあります。

川瀬敦士 目印矢印、標識とか試してみましたか?

高野栄子 やっています。赤い字が結構目に入りますので、赤字でトイレとか書いています。

三須恵美子 意外とトイレではなく便所にしてみては。トイレと書いてもインプットされないので便所としてはどうでしょう。昔は便所と言っていましたので。

川瀬敦士 言葉じゃなくて絵とか。

三須恵美子 押し入れの暗い所にオシッコをできないように何か物を置いてみては。

高野栄子 そうですね。今は押し入れの所に家具を移動して置いていますので、今は、放尿はないです。

川瀬敦士 今はオシッコをしてしまう所に家具をおいて対応しているので無いのですね。

三須恵美子 例えば立ちション禁止という表示もいいかもしれませんよ。

石附克也(居宅A・CM) デイサービスで働いていた時、同じ柱に立ちションする方がいまして、その柱に立ちション禁止を表示しました。

高野栄子 以前に、鳥居をそこに置くとかありました。

三須恵美子 そこにはオシッコできませんよね。神社の鳥居ですから。

川瀬敦士 夜間のことですか?日中も?

高野栄子 夜間です。日中はなるべく顔を見に行ったりしていますので、夜間帯です。

川瀬敦士 夜間寝ている時に起こしてトイレ誘導するのですか?

高野栄子 夜間の巡視の時、決まった時間帯に行くのですが、ドアを開けた時に、目が開いていたり起きていたりする場合に誘導しています。また排泄のパターンがだいたいつかめてきていますので、パターンにあった時間を見計らって巡視をしています。

川瀬敦士 ありがとうございました。この例はうまくいっているようですね。

 

頻回の尿意の訴え

川瀬敦士 続いて当院のショートステイの例です。実際に排尿は無いのに頻回に尿意を訴える、独歩不可で付添いが必要なため人手が足りなくなる、時間誘導しても空振りが多く、トイレ誘導した後に多量の便失禁がありその後の着替えや処理に時間がかかってしまう、といった内容となります。オシッコが出ないのに頻回に尿意を訴える人はいるのですか?

三須恵美子(労災・看) 過活動膀胱だったりすれば不穏になりますし、あとは高齢者に多いのは尿路感染を起こしている可能性があるので、そこを見極めることが必要なのかと思います。過活動膀胱だったら内服薬でうまくコントロールできますので。あとは何か気を引きたいために尿意を訴えるような人もいます。

川瀬敦士(川瀬・リハ) あとは排便のリズムですが、これは薬とかで調整できる部分もあるのでしょうか?

三須恵美子 ありますね。

川瀬敦士 時間誘導もリズムをしっかり把握したうえで行わないと空振りしてしましますね。

三須恵美子 誘導は腸が活発に動く朝、朝食後が良いと思います。

川瀬敦士 大量の便で便失禁があるようですが、大量の便に対応するおむつとかはあるのですか?

須田真治(ユニ・営) 便はおむつの場合は難しいので、水溶便になってしまうのをできる限り形のある便にするにはやっぱり食事が重要と思います。形ある便にすることが重要です。またおむつの場合は空間をある程度作ってやらないと便は取り切れないので、逆にパットをつけないで取り切るとかが良いのかもしれません。

川瀬敦士 このような方はあえてパットをいれないでスペースを作ってやることが重要なのですね。

須田真治 便についてはなかなか把握できないこともありますが、ある程度は、排便記録を付けることで、その方のパターンを把握できることがあると思います。

川瀬敦士 3日くらいつければ規則はわかりますよ、と先ほども三須さんがおっしゃっていましたね。また、人手が足りなくなるという問題はありますか?船越さんどうですか?

船越麻美(特養・介) ありますね。頻回に呼ばれて。

川瀬敦士 一人で行ける人は行っていただければいいですが、連れて行ってくれと言う方はやはり大変なのですかね。例えばポータブルトイレをベットサイドに置くとか、自動で取ってくれる様な容器も昔はありましたが、機械に頼りすぎるのはよくないですね。対応しきれない部分もあるのですね。

船越麻美 はい。ありますね。

川瀬敦士 そういう時は言葉で?気を紛らわせるような。どうやって対応していますか?

船越麻美 音楽をかけたり、その方の好きなテレビを付けて集中して見てもらったりして尿意を忘れてもらい、私たちの手が空いたら連れて行ったりしていますね。

石附克也(居宅A・CM) ショートステイの時だけなのか、それとも自宅でもそうなのか。ショートの時だけであれば、かまってもらいたいとか、緊張が取れていないだけなのかもしれません。

川瀬敦士 施設に来ると緊張して、一つのことに固執しているような。

石附克也 漏らしちゃいけない、漏らしちゃいけない、と思い頻回になるとか。自宅でもこのような状況であれば、それこそ疾病の可能性もあるのかと思います。

川瀬敦士 施設での緊張感を緩和するにはどう対応したら良いでしょうか?音楽とか気分転換の話が出ましたけれども、ぐっすり眠れるような何か日中の活動とかあればいいのでは。サ高住かえるハウスでは頻回に呼ばれる人はいますか?原島さんどうでしょう。

原島哲志(川瀬・介) 頻回に行く人はいますが、本当かどうか?例えば、5分おきに頻回にトイレに行く人もドライブに行っている時はトイレに行きたいと言わないので。買い物なんかに行っている時も行きませんからね。ということは本当にトイレに行きたいのかな?と思います。1時間くらいのドライブに行くと、途中でトイレに行かず、住宅に帰ってきてからトイレに行きますからね。やはり、することがなく余計なことを考える時間があると、トイレに行ってしまうというのが最後の手段というか、紛らわす手段なのかもしれませんね。

三須恵美子(労災・看) この方は男性ですかね。男性だと高齢者はだいたい前立腺肥大があるのでわりと頻尿になりやすいです。だから失敗すると悪いと思いなおさら頻回に行きます。その可能性はあります。

川瀬敦士(川瀬・リハ) この頻回の問題は施設であれば大きな問題だと思います。高野さんにもお聞きしたいです。どうですか?

高野栄子(GH・介) ありますね。1日数えたら28回でした。この方が来られてから2日~3日くらいはすごかったです。やはり空振りはありますね。行くけど出ない。この方はリハビリをして私たちの施設に来られたので、リハビリということが結構インプットされていて、歩行練習しましょうと言って、トイレも近くじゃなく、少し離れたところに行くようにして、リハビリをしましょうと声をかけて行くようにしていますので、トイレと言った時に、じゃあ歩いて行きましょうと声掛けし、途中でリハビリはうまく出来ましたねと話題を変えていくと、トイレに行かずに済みます。だからきっと注意を違う所にそらすというか、目的が変わるような声掛けをするといいのかもしれません。今現在は11回です。

川瀬敦士 トイレの間隔は延びたわけですね。歩行には手間がかかっていますが。歩行訓練ができていますね。すばらしいです。

 

薬の影響

川瀬敦士 それでは次に行きましょう。これは当院外来の例です。坂井さん説明お願いします。

坂井美和子(川瀬・看) 便が緩くてすごく困っているということで相談があり、お薬をたくさん飲んでいる方でした。今現在飲んでいるお薬で下痢の副作用があるものを調べて、下痢の副作用の可能性のある薬を中止したら、下痢が改善し普通便が出るようになりました。


川瀬神経内科クリニック 看護師 坂井美和子 氏

川瀬敦士 考慮すべきお薬がいくつかあり、それが下剤だったりとか。

坂井美和子 最初は下痢止めを飲んで、いろいろ試してみたがなかなかうまくいかなくて、それでは服用中の薬自体に問題があるのではと考え、調整しました。

川瀬敦士 先ほど三須さんも言っていましたが、そういったところもちゃんと見ていく必要があると感じます。

 

排泄時の姿勢の関係,おむつから溢れる

川瀬敦士(川瀬・リハ) 次の事例は当院リハビリの皆川さんお願いします。

皆川尚久(川瀬・リハ) 76歳女性の方で、普段は旦那様が時間誘導して排泄をしていますが、便器に腰を掛けても排泄がないことがあり、その後立ちながらおむつをはめようとする時に排泄することがあって、衣服や床を汚してしまい困っていたケースです。そこで「出ない」と言っていても、立ち上がった時に出るということは、筋肉の緊張の影響で出ることがありますので、立ち上がったら、またもう一度座らせて排泄があるかどうかを確認してください、とアドバイスしたところ失敗するケースが減った例です。他の施設でもズボンを下げたら待てずに排泄してしまうケースがあるかもしれません。


川瀬神経内科クリニック 作業療法士 皆川尚久 氏

川瀬敦士 山崎さん、実際に訪問されていてトイレ誘導でこのような方はいますか?

山﨑眞代(訪介・介) いますね。訪問介護は利用者様のリズムに合わせて訪問出来るものではないので、私たちが訪問した時間に誘導して行ってもらうことが多いのですが、やはり利用者様のリズムではないので。時間も限られていて排泄介助だと30分と短い時間になっていて、なかなかうまくタイミングよく出来ないことがありますね。


ジャパンケア加茂訪問介護事業所 訪問介護員 山﨑眞代 氏

川瀬敦士 タイミングの問題はありますね。石丸さんはその点、プランを組む上で何か工夫したとかありますか?訪問介護を排尿に対して入れるタイミングを教えてください。

石丸祐子(居宅B・CM) タイミングは難しいですよね。パターンが決まっていればそこに入れられますが、パターンが決まってないので、訪問介護を入れてもしょうがないですよね、とご家族に言われることがあって、困るケースはあります。入れたくても入れられない。


居宅介護支援事業所長和園 介護支援専門員 石丸祐子 氏

山﨑眞代 訪問介護で行った時に、「もうすでにトイレに行った後です」と言われることも結構多く、その時はケアマネに報告させて頂き、時間をずらす等の調整をしてもらっています。しかし自然現象なのでなかなか毎回うまくいくとは限りませんね。

川瀬敦士 佐藤さんはいかがですか?

佐藤光美(居宅B・CM) 私のケースでもお昼に1回、13:00に訪問介護に入ってもらっているケースがありますが、ご本人はトイレに行きますが、失禁していることが多くて、パットを抜くことはできますが、新しいものを入れることが出来なく、娘さんが夕方に帰ってくるまでの間にいっぱいになってしまって衣服も汚れてしまうということで、お昼に入ってもらっています。トイレ誘導もしますが、汚染しているパットや紙パンツを交換するということで入ってもらっています。それこそ先程石丸さんが言ったようにその人の思いに合わせて入れるわけではなくて、私の場合は汚染しているものを交換するという目的でお昼の時間帯に1回入ってもらっています。その時に排泄がある時もありますけど、汚染している回数が段々増えてきているっていう感じで。なかなか難しいですね。


居宅介護支援事業所長和園 介護支援専門員 佐藤光美 氏

川瀬敦士(川瀬・リハ) 今の制度で24時間定期巡回もありますが、もっと介護保険外でも15分とかワンポイントで行けるようなサービスを駆使して、仮に行ったとしても、難しいことかもしれませんね。その前にアセスメントをしっかり取った上でサービスを提供しなくてはいけませんね。石附さんどうですか?

石附克也(居宅A・CM) 汚れることを前提で、時間を決めて、その時にチェックして、汚れていたら陰部を清拭して下さいとか、そこでトイレ誘導して出れば、それはそれで良いし。今のおむつは性能が良くてサラサラしていますよね。

三須恵美子(労災・看) そうですよね。失禁してもだいたい20分くらいで吸収して逆戻りしないサラサラした感じになります。最初はちょっと湿ってるんですけど、20分くらいすると本当にサラサラした感じになります。皆さんもやってみたらいいと思います。

石附克也 訪問介護も夕方に一回入っておむつを交換して、それで朝まで全然大丈夫というケースがあります。それこそ便が出なければ全く大丈夫ですね。

川瀬敦士 赤ちゃん用だと、トレーニングパンツのようにあえて濡れている感じが分かるようにしたおむつもありますけれども大人用はサラサラなのですね。

須田真治(ユニ・営) 私共はおむつの勉強会をやって、プロの方におむつの使い方を説明する機会がありますが、「ユニ・チャームさんが言っている様に当てているのですが、漏れちゃいます。」という声をよく聞くことがありまして、「それは当て方が違います。メーカーによっても当て方が微妙に違いますよ。」というお話をしていたのですが、実は高齢者の尿自体が私たちの尿と違うということがわかってですね。高齢者の尿は濁った尿で、私たちの尿は透明です。なぜその濁った尿が出るのかということを調べたら、寝たきりで排尿すると、どうしても膀胱内に尿が残ってしまって、その残った尿が、微生物が分解することによって濁った尿になる、結晶が尿の中にたまってしまうことが分かってですね、それがパットの表面の目を詰まらせて尿の吸収を止めちゃうことが分かっています。そこでおむつのトップシートを少し改良して、高齢者の尿をうまく吸収して表面に残さない、サラット感を出来る限り保てるようにしています。

川瀬裕士(川瀬・医師) それはどういうものですか?

須田真治(ユニ・営) 赤ちゃん用のトップシートを改良して使っています。なみなみシートと言って女性の生理用品に使われているトップシートを使っています。女性の生理の時の経血はやはりドロッとしています。高齢者の水溶便もドロッとしています。通常のパットだとなかなかとりきれなかったりするので、通常のおむつは主に対象は尿ですが、トップシートの素材を少し改良して作りましたので非常にサラサラ感が出ています。

川瀬裕士 これはユニ・チャームさんだけですか?

須田真治 はい、そうです。

川瀬裕士 購入する時はどの種類を選べばいいのですか?

須田真治 長時間、7時間から8時間使う方にとってはこういったシートが肌へのダメージも少なくて良いと思います。もちろん長時間ではなくこまめに交換するのであれば短時間用もあります。吸収力は600㏄、700㏄、900㏄、1100㏄、最近は1500㏄まで吸収するものもあります。

川瀬裕士 1500cc? 一日の尿量くらい?

須田真治 先ほどもお話がありましたように、今は人手不足ですよね。本当はおむつをこまめに交換してあげたいのですが、その方に関わる時間が無いため、ということもあります。

三須恵美子(労災・看) 在宅もそうですが介護負担を軽減するため、高吸収のパットを使って、1日3回交換とか1日2回交換とかで介護負担を軽減することはあります。褥瘡の面でも頻回におむつを替えると皮膚をずらす、こすることになり褥瘡には良くないと言われています。よって私の病院では高吸収のパットを使用しておむつを頻回に替えないようにしています。

須田真治 スキントラブルの要因は頻回におむつ交換をしてしまうと、ズレ、ヨレ、摩擦と考えられています。そして水分を残さないことを注意していただくのが重要だと思います。

石丸祐子(居宅B・CM) 費用的にはやはり良いものは高いのですか?

須田真治 そうですね。単純に言うと10円のパット2枚使えば20円ですが、15円のパットを1枚で済めば、「5円お得じゃないですか」というのが私たちの提案なのです。

川瀬裕士 子供の場合はおむつを使用する期間はせいぜい2~3年ですが、高齢者の場合は10年使う可能性もあるとしたら、費用の問題もあります。

三須恵美子 当院でも持ち込みのおむつで、安いおむつは通気性がなく皮膚がふやけるので皮膚トラブルを起こします。これを漏れるからと言って2枚も3枚重ね当てして、漏れてシーツまで汚れてしまうと、安いおむつでも枚数を考えると、高吸収のものを使った方が安いですし、介護負担も少ないです。

川瀬裕士 間違った使い方をしているご家族さんがいるかもしれませんね。

三須恵美子 その辺を指導するとご家族様が楽になるのかなと思います。

須田真治 皆さん、特売を見て買っちゃいます。

三須恵美子 そうです。皆さん1枚計算で安いものを買いますが、全体のランニングコストを考えるべきです。

石附克也(居宅A・CM) 良いものは夜よく眠れるようになります。夜中に交換しなくてすみますから。

須田真治(ユニ・営) (おむつ)中と外は同じメーカーでそろえたほうが良いです。パットと外側のパンツ、パットと外側のテープは同じ機械でどこのメーカーも作っていますので、ユニ・チャームのパットを他のメーカーのテープやパンツにつけるとどうしてもずれてしまいます。
三須恵美子(労災・看) それと重要なのが、メーカーが違うと、外のおむつのギャザーの中に、中に入れるパットのギャザーが入らないということがあります。ここにギャザーをきちっと立ち上げないと漏れます。

川瀬裕士(川瀬・医師) 細かいところがあるのですね。正しい使い方と正しいおむつの選択があるのですね。

 

書籍の紹介

川瀬敦士(川瀬・リハ) それでは後半を始めます。書籍の方も見ていきましょう。
杉山孝博先生の「認知症の9大法則」の中では、皮膚・排泄ケア認定看護師などの排泄の専門家が紹介されています。また藤本クリニックの「認知症ケアこれならできる50のヒント」では、誘い方の工夫が紹介されています。「今日の具合はどうですか?」などの自然な会話からトイレに誘う、「散歩に行きましょう。その前にトイレに行きましょう。」のように、ついでにという感じで誘う方法が紹介されています。また介助の方法として、下衣は気持ちをそらしてサッと下げる、衣類や介助者を握って離さない時はタオルを出して「これ持ってください」と言ってみるなどの具体的な方法が紹介されています。その他にも、このような介護に関する書籍がありますので、読んでみてください。

・認知症ケアこれならできる50のヒント
(奥村典子先生・藤本直規先生)・認知症よい対応・わるい対応 正しい理解と効果的な予防
(浦上克哉先生)・楽になる認知症ケアのコツ
(山口晴保先生)

・認知症の9大法則
(杉山孝博先生)

・和光病院式認知症ケア実践ハンドブック
(和光病院看護部)

・認知症の症状に対するケア 中核症状/行動・心理症状
(中村祐先生)

・ユマニチュード入門
(イブジネスト、ロゼットマレスコッティ、本田美和子先生)

 

まとめ

川瀬敦士 今日のまとめです。排泄に関する様々な問題に対して、本日話し合った対応策をまとめています。是非、実際の現場で試してみてください。

排泄問題に役立つ実践介護テクニック

排泄の問題 対 応
タイミングがわからない サインを見逃さない、排尿日誌
便による汚染・皮膚トラブル プラグローブ、押し吹き
おむつ交換の拒否抵抗 性別、触り方
おむつやパットを外す リハビリパンツのみで
便失禁の対応 声のかけ方、誘い方
トイレではない所で パターン把握、表示
頻回の尿意の訴え 注意転換(ドライブ、散歩)
薬の影響 内服薬調整
排泄時の姿勢 座り直し
おむつから溢れる 長時間対応おむつ

 

感 想

川瀬敦士(川瀬・リハ) 最後に皆さんより感想をいただきたいと思います。

船越麻美(特養・介) 皆さんの意見を聞き、いろんな方法で対応することができ、無理やりトイレ誘導するのではなく、その人が行きたい時に行ってあげたりとか、行けない時は気分転換をしてもらったりとか、改めて思いました。

山﨑眞代(訪介・介) なかなか訪問介護で利用者様のタイミングで訪問することは難しいですが、その利用者様に対してアセスメントや1日を通してのリズムをしっかりご家族に確認し、見ていきたいと反省する点もありました。またいろんな情報をいただき良かったと思います。ありがとうございました。

原島哲志(川瀬・介) 今日は貴重なお話をありがとうございました。事例等も参考になりました。当施設は認知症の方が多いので、コミュニケーションが取れない、意思の疎通が出来ないということで、おむつを外してしまう方が悪いのか、それとも当てている我々の方が悪いのか、どちらなのかと思います。まだまだ介護の我々の方が手を出し尽くしていないところも多々あるのではないかと思いますので、その点か探っていきたいと思います。ありがとうございました。

坂井美和子(川瀬・看) 当院外来でもいろいろと相談を受けますが、排尿日誌を3日つけるとその人のパターンが分かるということで、外来でもそのようなシート、日誌をつけてもらって、アドバイス、支援していきたいと思いました。ありがとうございました。

高橋芳雄(川瀬・介) 排泄も問題は非常にデリケートな話であるので、私も介護の仕事を20年もしておりますが、上手くいこともあれば失敗することもあります。その失敗を自分の中だけで答えを出そうとすると、上手くいかないことがありますので、同僚スタッフや仲間にいろんな話を聞いて、またこのような勉強会で新しい発見やヒントをいただきましたので、これを持ち帰って日々の介護技術のスキルアップにつなげていければと思います。今日はありがとうございました。

Iさん(訪介・介) いろいろと勉強させられることが多く、また利用者様にとって何が一番いいのか、事業所の方に戻りましてアセスメント等を検討したり、勉強会を開いたりしていこうと思います。次回も参加できればと思います。ありがとうございました。

石丸祐子(居宅B・CM) 私たちケアマネはお願いする立場で、サービス事業者の方にやってもらっています。今まで私は拒否のある方に対して、対応方法にしか目がいきませんでしたが、排尿日誌をつけてパターンを理解することや、おむつは適切なものを使うことで、もしかすると拒否がなくなるかもしれないこと等、すごく勉強になりました。私は4月より移動になりデイサービスに行きますので、在宅の方で排泄はすごく大きな問題でご家族が苦労されているところなので、デイサービスの方で排泄のパターンを把握してご家族へ返せたら良いと思います。今日はありがとうございました。

高野栄子(GH・介) 貴重なご意見をいただき勉強になりました。排泄はすごくプライベートな部分だったり、羞恥心だったりして、女性、男性に限らずですが、当施設ではまずは排泄パターンをつかんで、なるべく失禁をなくしていこうと目標を立てて、やっております。いろいろと試行錯誤しながらたくさん失敗もありますが、今日のご意見を生かしていきたいと思います。あと紙パンツも検討していきたいと思います。ありがとうございました。

皆川尚久(川瀬・リハ) 皆さんがいろいろと苦労されているのが分かりました。またおむつにはいろいろな種類があるのでパンフレット等をいただき、リハビリの訪問時に紹介していければと思いました。今日はありがとうございました。

佐野麻子(川瀬・介) 樫の森で排泄チェックリストを担当しておりますが、現在、排泄の介助を必要すると利用者様が増えて、汚れたので替えることで、手薄になってしまうことがありますので、排尿の日誌をつけて、高野さんもおっしゃっていた失禁をなくすことを目標にしていこうと思いました。

内山千鶴(デイサ・介) 疑問にきちんと答えていただきまして、私たちの方でも今後、排尿日誌をつけるとか、参考にしていきたい部分がたくさんありました。パットをあてなければいけないとか、おむつは汚してはいけないものというような観念を捨てていきながら、自分が排泄介助されたらどういう気持ちなのかを念頭に置きながら介助に携わっていきたいと思いました。本日はありがとうございました。

佐藤光美(居宅B・CM) 私もケアマネの仕事をしていますので、直接排泄介助することはありませんが、排泄で困っている方が多くいます。プライドがあり布パンツから紙パンツに切り替える時の葛藤だったり、ご家族の介助量だったりとか、その点で困っている方が最近多いので、今日の貴重なご意見を参考にさせていただき、良い提案をさせていただき、その人らしく過ごせるようにプランを作っていければと思います。本日はありがとうございました。

石附克也(居宅A・CM) ケアマネとしてやはり、排泄のことは現場にお願いすることが多いのですが、実は非常にアセスメントが重要でそれはケアマネだけで出来るものでもないし、現場の職員だけで出来るものでもないし、ましてご家族だけで出来るものではないので、きちんとパターンを把握し、ご本人の気持ちも考えながらより良いケアが出来るようになっていければいいなと思います。また、すごく最近のおむつは機能がよくなっていると勉強になりました。ありがとうございました。

須田真治(ユニ・営) 今日は貴重なお時間いただきまた、またメーカーとして参加させていただきありがとうございました。皆様のご苦労をお聞きして、商品の機能とそれをどう使っていくかを皆さんにお伝えすることが出来ました。また今後、正しい使い方と選択方法を知っていただく機会をいただければ、どちらでも訪問させていただきます。また勉強会もご希望によってさせていただきますのでいつでもお声をかけていただければと思います。便に対応する商品ですが、今すぐにはなかなか対応することは難しいですが、皆さんのご意見を開発本部へ伝えて、商品開発につなげていければと思います。ありがとうございました。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 的外れな質問かもしれませんが、便は臭いの問題はありませんか?漏れないことだけでなく、臭いを抑えるようなものはありますかね。

三須恵美子(労災・看) パナソニックの「ニオフ」という商品です。臭いをオフするからニオフなのだと思いますが、これは科学分解で臭いを消します。アンモニア臭と硫化水素に反応するので、まさに便とオシッコの臭いに科学反応して臭いを消します。当院でも便処置をすると廊下まで臭うことがありましたが、これをやってからはかなり効果的でした。

川瀬敦士 今日は紹介できなかった事例の中に「仕事から帰宅し、玄関を開けた途端に尿や便の臭いがすると家に帰りたくなくなる」というご家族の声がありました。インターネットでもどこでも購入できるようです。

三須恵美子 本当に多職種で連携されていて素晴らしい会だと思って、この会に参加できて本当にありがたかったです。排泄に関してはなるべく自立できるようにと私たちも思いますし、高齢者だからおむつでしょうがないと、皆さん諦めてなさそうだったので安心しました。本当に諦めずにトライしていくことが大事だと思います。諦めてしまうと寝たきりを作ってしまうので、それだけは避けたいと思います。また褥瘡でもストーマのことでも連絡していただければ訪問しますので呼んでいただければと思います。これからもよろしくお願い致します。

川瀬康裕(川瀬・医師) 皆様お疲れ様でした。大変有意義な会でした。やはり排泄の問題は医療との関係も非常に深いと感じました。私も外来で頻尿の問題に対応することはよくありますが、ただ(高齢者に)抗コリン剤はなるべく使いたくないという考えがあります。実際に抗コリン剤を使って明らかに認知機能が落ちたことがありました。排尿、排便に影響を与える薬は非常に多いので、その方にとっての必要度を考えながらやらなければと思います。こういう場で情報をホットにやり取りすることで、きっといい解決策がさらに出てくると思います。そして困った時は三須さんに相談すればいいのかなあと思いましたし、是非新しい道具も使ってみて、その結果を須田さんに報告すると、さらに良いものを作ってくださるのかと思いました。今日は本当にありがとうございました。


川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬康裕 氏