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認魂レポート

第8回テーマ : 不眠、昼夜逆転にどう対応するか?

参加者:
【介護職】高橋芳雄1 土田和樹2 原島哲志1 布施良友1
【介護支援専門員】難波淳4 渡辺美佳子1  【薬剤師】加藤智世5 山寺忠之5
【世話人】山谷幸6  【看護師】坂井美和子1   【作業療法士】 川瀬敦士1 早川直子7
【医師】川瀬裕士1)  

介護職・・・以下「介」
介護支援専門員・・・以下「CM」
薬剤師・・・以下「薬」
世話人・・・以下「世」
作業療法士・・・以下「リハ」
看護師・・・以下「看」

1)川瀬神経内科クリニック、通所リハビリ樫の森・かわせみ、サービス付き高齢者向け住宅かえるハウス
(以下「川瀬」)
2)はあとふるあたご グループホーム三条(以下「GH」)
3)特別養護老人ホームおおじまの里(以下「特養」)
4)ケアプランセンター好日庵(以下「居宅」)
5)メッツ嵐南薬局(以下「薬局」)
6)(公社)認知症の人と家族の会 新潟県支部三条地区(以下「家族」)
7)介護老人保健施設 いっぷく(以下「老健」) 

 


 

氏  名(所属・職種)
川瀬敦士(川瀬・リハ)  
定刻になりましたので第8回認知症ケアをみんなで考える会認魂を始めたいと思います。初めに当院副院長より開会のご挨拶をさせていただきたいと思います。


 川瀬神経内科クリニック 作業療法士 川瀬敦士 氏

川瀬裕士(川瀬・医師) 皆さん、お集りいただきありがとうございます。川瀬神経内科クリニックの川瀬裕士です。この認魂も今回で8回目になりました。2015年から回を重ねて、終わった後には、「良い話し合いが出来ました」というお声を参加者の方からいただきました。内容については終わった後にまとめてホームページ上で公開しています。今まで取り上げたテーマは、暴言暴力、帰宅欲求、サービス利用拒否、排泄、入浴、食事などがありました。今回のテーマは「不眠、昼夜逆転にどう対応するか?」としました。このテーマは夜間頻尿とも密接に関わってきますが、人間の一日を通しての睡眠サイクルを考えました。夜に限らず、日中の過ごし方が夜の睡眠にも影響するだろうという事で、不眠というシンプルなワードと、昼夜逆転という一日の概日リズム1に関わるところで、幅広く話を集めていきたいと思いました。施設の方ですと、夜の対応というのは、その施設の中で蓄積されたノウハウがあるかもしれませんが、ご家族の場合は個々の家で起こっていることなので、それぞれ家族の皆さんはプロではなく、自分の親やお爺ちゃん、お婆ちゃんしか見ていない状況ですので、たくさんの不眠の方の対処法を知っているわけではないと思います。そこで今回は認知症の人と家族の会新潟県支部三条地区代表の山谷様に特別にお願いしまして、ご参加していただいております。ご家族の困っていることなどお教えいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願い致します。

*1 昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わないため、1日の中で社会的に要求される、あるいは自ら望む時間帯に睡眠をとることができず、活動に困難をきたすような睡眠障害をいいます。


川瀬神経内科クリニック 医師 川瀬裕士 氏

川瀬敦士 本日の流れですが、不眠・昼夜逆転に対応することの意義を確認します。そして本人・介護者の気持ちについて考えてみます。その後、参加者の自己紹介、事例紹介、感想という内容で進めていきます。それでは早速本日のテーマに対応することの意義です。(図1)

: 不眠・昼夜逆転に対応することの意義

・夜にしっかり眠ることで身体的・精神的な疲れを取ることができる
・一日のリズムが良くなることで日中の活動性が上がる
・家族や介護者も休息を取ることができる
・慢性的な睡眠不足は、アミロイドβが増加するという報告がある

 

次に、不眠や昼夜逆転がある時の本人の声・気持ちです。(図2)認知機能や心理的なもの以外の部分でも様々な況があるのかもしれません。いろんな原因を考えながらこれからの話し合いを進めていければと思います。

: 不眠や昼夜逆転がある時の本人の声・気持ち

・眠れない、すぐに目が覚める
・なぜここで眠らなければならないのか?
・家に帰りたい(ここは自分が寝るところではない)
・寝る時間ではない
・何かしなければいけないことがあったはず
・寂しい、怖い
・トイレに行きたくなる
・理由を訴えない

 

そしてこちらは、家族や介護者の声・気持ちです。(図3

: 家族や介護者の声・気持ち

・夜はゆっくり寝てほしい
・トイレに何度も起こさないでほしい
・一人でトイレに行ってほしい(どこも汚さずに)
・なぜ夜中になると元気になるの?
・寝るのが早すぎて夜中に起きるので、もっと遅く寝てほしい
・ガサガサと動き回ると自分が眠れない
・転ぶから歩き回らないでほしい
・家の中を荒らさないでほしい
・外に出ないでほしい
・他の人に迷惑をかけないでほしい
・うるさい

 

などが出ています。これについては皆さんより直接お聞かせいただければと思います。

川瀬敦士(川瀬・リハ) それでは事例紹介に入ります。それぞれの事例に対しては、認魂研修会としては「どう対応するか」という事なので対応策を求めることが出来れば一番良いのですが、そこにはあまりこだわりすぎないで、例えばその事例に対する質問や、自分もそういう経験したがどうだったという感想でもいいですので、気軽にご発言していただければと思います。

 

就寝時間

川瀬敦士  1例目の事例です。米田さんお願いします。

Y氏(特養・介) 閉眼され寝息のような呼吸をされていますが、手の動きがあったり独語も聞かれたりして、浅い睡眠になっている様で、(深い)入眠が朝方になることが多い方です。そのせいか日中閉眼されていることが多いです。

川瀬敦士 ありがとうございます。やはり対応で困ってしまうことはあるのですか?この方は特養入所者ですが長く入所されている方ですか?

Y氏 そうですね、施設が出来てまだ5年位しかたっていません。この方も5年いる方なので、職員との交流は持てていると思いますが、日中はしっかりと活動できると良いと思います。スプーンを使ったりパンを食べたり、自分で食事ができる方ですが、閉眼しているとなかなか食べることができなく、全介助になったりしますので、夜はしっかり寝て、昼間は活動できるようになるといいと思います。昼夜逆転しているようです。

川瀬敦士 昼間の活動量が減っているという例なのかもしれませんね。昼間起きていられるために、できそうな事や取り組んでいる事はありますかね?

Y氏 今は昼間の活動量を増やすために、ご本人はプロレスがお好きなので・・・。男性です。

川瀬裕士(川瀬・医師) 何才くらいの方ですか?

Y氏 90才くらいです。受け答えはしっかり出来る方です。

川瀬裕士 認知症の程度はどのくらい?

Y氏 若干ありますが。

川瀬裕士 まあまあしっかりしている方なのですね。

Y氏 あとパーキンソン病もあります。

川瀬裕士 それがあると大分違いますね。

Y氏 プロレスの本とか録画したテレビを見たり、あとは職員と一緒に洗濯物をたたんだりしたりしています。

川瀬裕士 夜は良い睡眠が取れてなさそうで、日中は眠ったような状態が見られると。入眠が朝方になることがあるとのことですが、完全に寝た状態とそうでない状態は見ていたらわかりますか?

Y氏 そうですね。分かります。

川瀬裕士 「これはもう完全に寝ているな」と見てわかる状態と、そうではなくて手が動いていたりして、寝ているのか寝ていないのか良く分からない状態があって、よく眠っているといえる状態がすごく短くて、朝方になってしまうこともあるのですね。

Y氏 そうですね。寝ていると独語や手の動きもなく、よく寝ている時もあります。その時々によります。

川瀬裕士 最終的に完全に眠っているというのとは違う変な状態が、睡眠開始から途中まであるということですね。

Y氏 そうですね。たまに寝ぼけているせいか手とか足とか出てきます。

川瀬裕士 何時くらいに就寝するのですか?

Y氏 だいたい夜7時くらいでしょうか。

川瀬裕士 早いですね!

Y氏 その時間帯になると閉眼されていたりしますので。

川瀬裕士 それは睡眠薬とか使わずに「もう寝るよ」と言って寝るのですか?

Y氏 ご飯を食べ終わるとすぐに寝床に行ってしまいます。

川瀬裕士 自分で食後に何かを楽しめるほどの認知機能がない方であれば、ご飯を食べたら後は寝るだけで、眠くなるのかもしれませんね。パーキンソン病の方だと、ご飯食べた後は特に血圧が下がったりします。その方は、寝床に行ってから本当の深い睡眠になるまでに何時間かかりますか?

Y氏 そうですね。ずっと浅眠で、(入眠が)朝の5時になったりします。

川瀬裕士 夜の7時にお布団に入って、そこから朝の5時までは寝ていないのか浅眠なのかという状況ですね。

Y氏 その時々によりますね。

川瀬裕士 かなり長い時間ですからね。寝ているのかもしれませんね。その方は、睡眠薬は使っていませんか?

Y氏 使っていません。

川瀬敦士 (川瀬・リハ) 夜の7時に寝たら朝の5時までは相当長いですよね。(施設の)消灯時間が夜の7時くらいなのですね?

Y氏 そうですね。起きている方は起きていますが、ただこの方はすぐに「もう寝るて」と言って行ってしまいます。

川瀬敦士 まとまって集中して眠ることが出来ればいいのですが、食後はすぐに眠くなるのですね。それを止めるのもちょっと切ない気持ちになりますしね。だとしたら最初にお布団に行った直後は、結構深い眠りに入っているのでしょうか?

Y氏(特養・介) そうですね。その時々によります。

川瀬敦士(川瀬・リハ) やはり介護職として関わっていて心配なのは、日中のぼんやりした状態があるという事事ですね。

Y氏 そうですね。結構、閉眼されていることが多いので‥。

川瀬敦士 その状態をどのように対応していったら良いかですね。

川瀬裕士(川瀬・医師) まず薬も含めてアプローチしたいと思いますね。完全にリズムが崩れている感じがします。そもそも夜の7時にお布団に入ることをなるべく「良し」としない方が良いのではないでしょうか。それは人手の問題もあるとは思いますが、それをやっている限りいつまでもリズムが取れないように思います。ちょっと寝たとしても起こすか、寝かさないようにして、まずは寝る時間を21時以降まで持っていく。手間かもしれませんが。そこで何か入眠のきっかけになるような薬を使って、深く入ってもらって、午前3時か4時くらいまで眠れればいいのですが。

川瀬敦士 ずっと19時に寝るパターンなのですね。布団に行くというか。

Y氏 そうですね、車いすの方ですが、ご飯を食べたらすぐに自分で行ってしまいます。18時過ぎには移動しようとしますのでスタッフで「もう少しここにいて下さい」と声掛けをしている状況です。

川瀬敦士 19時を20時に変えられたらどうなるのか見てみたいですね。ただ、そういうことは、施設で関わっていく上ではすごく難しいことだと思います。夜の19時から20時は人員的にも難しくなるのでしょうね。

Y氏 そうですね。本人が寝たいと言われると、やっぱり難しいですね。

川瀬敦士 当法人もサービス付き高齢者向け住宅を運営していますが、食事が終わって、だいたい皆さん何時位に寝ているのですか?

原島哲志(川瀬・介) 夕食が18時からで、その後、お茶を飲んだりして、19時半くらいから皆さん自分で戻られる方はお部屋に戻っていきます。寝る時間は早い人でも20時くらいですかね。19時に完全にお布団に入っている人はいません。この方は5年前に入所された時からこんな感じですか?

 
川瀬神経内科クリニック 介護職 原島哲志 氏

Y氏 そうです。5年間変わりありません。パターン的にも変わっていません。

川瀬敦士 寝る時間を遅くすることはちょっと突破口のような気がします。ただパーキンソン病などで食後にすぐに眠たくなる状態があるのであれば、無理に起こしておくこともリスクを考えてしまいます。

川瀬裕士 この方が本当にパーキンソン病かという事は、90才という年齢から考えると、ただのパーキンソン病ではないかもしれません。レビー小体型認知症か脳血管性認知症が混ざっているのかなとも思います。今飲んでいる薬を見てみないと何とも言えません。眠気の出る薬もたくさんありますし。

川瀬敦士 そうですね。飲んでいるお薬の情報がありあすか?

Y氏(特養・介) 〇〇錠(Lドーパ製剤)、〇〇錠(MAO-B阻害剤)、便秘薬を飲んでいます。

川瀬裕士(川瀬・医師) すごく強い眠気の出る薬はなさそうです。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 山谷さんどうでしょうか? 自宅で認知症の方を介護されている方もいると思いますが、入眠時間という事で何か話題になったりしたことはありますか?

山谷幸(家族・世) 入眠時間についてはあまりありませんが、ぐっと寝てぱっと起きると、(その人の頭の中では)もう朝になっていて、ご自分ではゆっくり寝たので朝になったつもりで背広に着替えて出勤しようとする。それを夜中に家族がどうやって止めようかといった相談は結構あります。今は出る時間じゃないことを分かってもらうために、家族が結構奮闘することはあります。


認知症の人と家族の会 新潟県支部三条地区 世話人 山谷 幸 氏

川瀬敦士 それは深夜、早朝で普通は出る時間じゃない時ですね。

山谷幸 そうです。家族の中には睡眠薬を使いたくない方と、それから睡眠はその人のリズムだから、最近は昼夜逆転しているけどそのうちにまたもとに戻るだろうと言う方と、本当にいろいろです。薬を使ってフラフラとして逆にトイレで転倒してしまう。それが嫌だから薬を飲ませないという方もいます。本当に様々です。

川瀬敦士 お薬によってまとまった良質な睡眠を得ることもできますが、一方では今おっしゃっていた副作用も考えなければいけないという事です。1例目の方に関してはそれほど強い眠気を引き起こす薬ではありませんでしたが‥。この方は昼間もうとうとされているので、なるべく(昼間は)活発に動いていただいたり、あとは入眠時間がポイントになってくると思いますので、その時間を少しずらしてみたりしてみてもいいのかもしれません。今後の経過を教えて下さい。次の例です。お願いします。

 

頻回のトイレコール、さみしさ

Y氏(特養・介) この方は、排泄の訴えのコールが頻回だったり、テレビを見ていたりと夜間寝ない事があります。ご自分の意思もハッキリとされていて、日中は(本人の希望で)臥床されていることが多く、離床時間を増やすことが難しいです。

川瀬敦士 はい、ありがとうございます。

川瀬裕士 何歳くらいの方ですか?

Y氏 76才です。

川瀬裕士 認知症はある?

Y氏 レビー小体型認知症の疑いがあります。

川瀬裕士 特養に入る方はそもそも介護が高く、自由に動けない人が多いと思いますが、動きの方は?

Y氏 介助がないと動けません。動きづらさがあります。

川瀬裕士 たぶん認知症もあるとは思いますが。70代ですが、レビー小体型認知症かパーキンソン病があるのですね。そして結構自分の意見があるのですね。

川瀬敦士 美佳子さんケアマネとして何か聞きたいことはありますか?

渡辺美佳子(川瀬・CM) 他の入所されている方にご迷惑になったりしていないのですか? 夜間にテレビを見ているようですが、音とかは配慮されているのでしょうか?


川瀬神経内科クリニック 介護支援専門員 渡辺美佳子 氏

Y氏(特養・介) 全部個室になっているので、大丈夫です。

山寺忠之(薬局・薬) 排泄の訴えのコールが多いという事は、トイレに頻回に行かれるのですか?


メッツ嵐南薬局 薬剤師 山寺忠之 氏

Y氏 そうですね、夜間は寝ている状態では尿器を使って対応している場合やトイレに連れて行く場合があります。間隔が短い時は15分、30分でコールがあります。

山寺忠之 排尿に関する治療でお薬は使っているのですか?

Y氏 薬の力も借りようかと話が職員の中から出たりしましたが、ご本人は沢山のお薬を飲んでおりこれ以上増やしたくないようです。だから職員も薬を使う前に出来ることからやってみようと思っています。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 排尿も自立出来ればいいことなのですがね。老健ではこのような方に何か自立支援等はありますか? リハの立場から何かありますか?

早川直子(老健・リハ) 日中も介助なのですよね。日中の活動を上げて、まずはトイレ動作からご自分で出来ることを増やしたりとか。そうすると夜の自立につながるのでは。

 
介護老人保健施設いっぷく 作業療法士 早川直子 氏

川瀬敦士 そうですね。トイレの訴えがある方なので、日中寝ていることが多いのであれば、まずはトイレから自分で行けるようになってほしいですね。起きられなくても何かベットサイドで出来る事はないか‥。

Y氏 そうですね、なるべく自分で出来ることはやってくださいとお伝えしていますが、ご本人が拒否をしています。

山谷幸(家族・世) 訴えに込められたものは排泄のことだけなのでしょうか?

Y氏 排泄もありますが、コールも頻回で「電気をつけて、消して、体の位置を上に上げろ、横に向けろ」と、結構頻回です。

山谷幸 結構家族の中には人恋しさというか、「俺をかまってくれ」という感じで、とにかく「おい、おい」と呼んでいるとか。トイレから帰ってきたばかりの時に、お腹が張っているのでさすって欲しいとか、そういうことなのでしょうかね。

原島哲志(川瀬・介) いますね。そういう方は。逆に先にこっちから行くと治ってきたりしますね。呼ばれてすぐに行くと、またすぐに呼ばれるので、呼ばれそうだなと思ってこっちから行って、何かするとだんだんコールが減ってくるか、間隔があいてくると思います。当施設にもこのような方はいますよ。

Y氏(特養・介) 今の段階だと、私たちも言われるのを分かっていて、「電気大丈夫?テレビ消そうか?」とか声かけしますが、その時は大丈夫と言われて、退室しますが、その直後に「ピンポン」とコールが鳴ったりすることが多いです。

山谷幸(家族・世) ちょっと背中をさすったり、足をさすったりすると安心してちょっと間隔があくという話はありますが‥。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 確かに参考書籍にもいくつか書いてありました。“眠りにつくまで、誰かがそばにいて、背中をさする。明かりをつけておきましょう〈暗いと不安に感じる〉(認知症の9大法則 50症状と対応策 杉山孝博 法研)”とか。 浦上先生も、“夜は部屋を真っ暗にしないこと。小さな灯りを一つ点けておくといった工夫をすると安心できる(認知症のよい対応わるい対応 浦上克哉 日本評論社)”と言っています。確かにそうですよね。尿意だけではなく不安感やさみしさのようなものももしかしたらあるのかもしれませんね。

Y氏 今までもともと奥様と一緒に自宅の方で住まわれていて、ご本人希望で特養に引っ越しされましたが、それでも最初の頃は家に帰りたいという訴えが多かったですが、今ではだんだん施設での暮らしに慣れてきたのかと思いますが、不安やさみしい気持ちもあると思います。

川瀬敦士 是非そういった心理的な部分も気持ちを聞き取りながら寂しさを埋めてあげるような関わり方をしてみてはどうでしょうか。いま原島さんが言った、先手で言うことも試してみて下さい。

原島哲志 (川瀬・介) 言われなくても、「また5分後に行くよ」と部屋から出る際に行ってあげると、また来てくれると思って安心する人も中にはいると思います。

Y氏 定期的に何分後とかに行くのですね。

原島哲志 そうです。

川瀬敦士 約束してあげるということですね。確かに不安な気持ちを解消してあげるために、“「明日はカラオケで歌いましょう。」とか、ご本人が楽しみにできることを話しましょう。”(認知症知って安心 症状別対応ガイド 数井裕光 メディカルレビュー社)と書籍にも書いてありました。安心させてあげるような声掛け、あとお部屋が廊下の隅っこで人の声が聞こえない場所は寂しいと思いますのでちょっと人の声がするようにベッドの位置を工夫するとか、もしかしたらあるのかもしれませんね。寂しさに寄り添うかたちでやってみてはいかがでしょうか。では続いて3人目の例です。

 

季節の変わり目、自分の役割

Y氏 この方は、季節の変わり目や年末年始等になると落ち着きがなくなります。またお金のことを気にされ、泥棒が入ったと思い、不穏になり夜間一睡もしない日もあります。

川瀬敦士 はい、ありがとうございます。薬剤師の加藤さん何かありますか?

加藤智世(薬局・薬) 泥棒が入ったと言っているのは、何か病気が絡んでいるのでしょうか?

Y氏 統合失調症、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病がある方です。

加藤智世 もともとそういった既往があるのですね。治療は現時点でも続けてお薬を飲んでいるのですか?


メッツ嵐南薬局 薬剤師 加藤智世 氏

Y氏(特養・介) お薬を飲んでいます。〇〇(抗精神病薬A)、〇〇(睡眠導入剤)、〇〇(抗精神病薬B)、〇〇(漢方薬)を飲んでいます。

川瀬裕士(川瀬・医師) その薬の内容を聞いただけで、結構なレベルの幻覚と妄想がかつては少なくともあった事が分かります。そうじゃなければここまでの薬は使いません。40代、50代からあった人でなければ、認知症に伴ってそうなったのかは分かりませんが、普通の認知症の人とはちょっと違う症状になっていると思います。

Y氏 夜間帯でどうしても不穏がすごくて対応できない時は、屯用で1錠〇〇(抗精神病薬B)を飲んでもらいます。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 身体的にも動きは良いのですか?

Y氏 はい、独歩で歩かれます。

川瀬裕士 何才ですか?

Y氏 80代です。

川瀬敦士 入所される前のご自宅でも幻覚や妄想があって、夜間落ち着きがなくなることがあったのですかね? ご家族から聞ければいいですが。

Y氏 一人暮らしをしていたようなので、ご家族様からは何も‥。

川瀬裕士 すでにある程度幻覚や妄想を抑える薬が入っている方なので単純に考えると、その薬の量の調節ということになりますが、出来れば量は増やさないで眠ってもらえる良い方法があればという状態だと思います。

山谷幸(家族・世) ご家庭でも春祭りになると騒ぎ始める(という方がいました)。やっぱり血が騒ぐという事なのでしょうね。家族の人もその時期が来ると始まるぞと思うようです。太鼓の音や笛の音色に敏感でその時期を過ぎるとまた元に戻るようです。お盆、正月、秋の収穫祭など、そういう時期になると心が騒ぐ方がいます。

川瀬敦士 そういうことを踏まえた声掛けや接し方をするだけでも違うのだと思います。夏祭りの思い出を話したり、親類の方は来られませんが、故郷の話をしたりとか。確かにそうですね。

山谷幸 その方のご家族は春のお祭りだけは本人を連れて行きました。そうすると落ち着くというか、自分の気持ちがスッとするのでしょうね。

川瀬敦士 ケアマネージャーの立場で難波さんどうでしょうか?

難波淳(居宅・CM) お家にいる方では、ご本人様がどういった思いで気持ちがソワソワしているのか、心配なのかはその方その方でだいぶ違います。この方はたぶん一人暮らしをしていたので、自分が全部を考えなければならない、やらなければならない、といった思いがあって季節の変わり目に、あれを出さなければ、これを準備しなければ、という事が全部気持ちの中にあり、(認知症の)症状があったりするとそれが上手く自分の中で整理がつかなくなって、でも整理がつかない自分がすごく嫌になったり、不安になったりすることが往々にしてあるのかと思います。そういったところで、じゃあこれはこうしよう、これはこうしてみよう、というように、例えば実際のお祭りに行くとか、時期が違ったとしても、(その人の)気持ちに合わせることによって、スッと付き物が落ちるような感じで不安が落ち着くのではないでしょうか。実際にあると思います。泥棒が入るとかも、きっと自分の家が不安なんでしょうね。戸締りはしっかりこのような鍵を付けます、とかそういった対応で安心につながってきます。事実と本人の気持ちにはギャップがあると思いますが、その中でも自分の落としどころが一つあると、スッと落ちていくと思います。それがまた、忘れてしまう方はなおさら繰り返し、繰り返しするのですが、何かそうやってすることである時期にスッと落ち着く時期があるのかもしれません。たぶん不安を取り除くやり方で、ご自身の中で何かの落としどころを作ってあげることは、試してみる価値はあると思います。


ケアプランセンター好日庵 介護支援専門員 難波 淳 氏

川瀬裕士(川瀬・医師) その人なりに違うその人のたぶん若い頃に強く自分の仕事だと思っていたこと、実際に自分がやらなければいけなかった事、女性の場合はご飯を作ったり、掃除をしたり、子供を育てたり、そういうような気持ちがすごく強いから、それを持ったまま年を取って認知症になると、「何か自分がしなければならないことがあったはずだ!」と焦る気持ちはずっと持っている。そういう本人の気持ちに上手く付き添って、例えば「もう〇〇をやったから大丈夫だよ」とか言ったりして落ち着かせられたような具体的な経験はみなさんありますか?

川瀬敦士(川瀬・リハ) まさに作業療法とかそういった部分で一緒に料理を作ったりとか。実例であればいいですね。

川瀬裕士 この人には、もしかしてこれかもしれない、この人にはこれが良かったなど。それが20個、30個となるべくたくさん出てくれば良いなと思います。後で思い出したら教えて下さい。

難波淳(居宅・CM) 街内の方とそれこそ在郷(田舎)の方、生活圏によっても全然違うと思います。街内の方はやっぱり三条祭り2の時期になると気持ちが高ぶると思います。でも私は大崎3の方ですが、三条祭りはそんなに関心がなく、周りのお年寄りの方もそんな感じです。となると近くの神社の祭りとか地元の神社の祭りに関心があります。保内の方になると、三条祭りよりも加茂祭りに関心を持っています。その方の生活圏域も含めて、本人からいろんなお話を聞くことはすごくためになる事が多いですし、そういう対応をしていくと実際にケアに入る時に興味をもって入ることが出来るので良いのかと思います。

*2  新潟県三条市の三条八幡宮で毎年5月に催される春の大祭。八幡宮境内、それに隣接する八幡公園には、露店が開き多くの人で賑わう。
*3 三条市内の1地区。歴史的に市の中心部から東へ少し離れたところにできた農村を元とし、現在は住宅地域。

川瀬裕士 昔夢中になっていたことに関連してある時期になると落ち着かなくなるというのは、夜に限らず日中もあるのかもしれませんね。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 通所リハビリテーションの芳雄さんどうでしょうか?

高橋芳雄(川瀬・介) 難波さんが、私が言いたいことはすべて言っていただきましたが、確かに若い頃にやっていた仕事や役割を引きずったまま年を重ねている方は多いです。例えば一つの例をあげると、当施設は通所なので、夕方に帰ります。帰る時間になるとみんなソワソワし始めます。そうした時に、自治会長をされていた方がいまして、挨拶が得意なのですが、閉会の挨拶とかそういうのを必ず帰る時にしてもらいます。そういった役割を持つことで自分の中にリズムが出てきて、良い結果につながりました。そういったことを見つけていくと逆にこちらが助けてもらえるような事もあるかもしれません。


川瀬神経内科クリニック 介護職 高橋芳雄 氏

川瀬敦士 役割があってそれを一人で昔のように全うしようとすると、上手くいいかなくてイライラしちゃいますが、逆にちょっと必要なところだけ手助けしてあげて、何か落としどころを見つけてあげることによって良い部分を引き出せるかもしれません。達成感で良い気持ちになるかもしれません。

 

レム睡眠行動障害

川瀬敦士 次の例に移ります。難波さんお願いします。

難波淳(居宅・CM) 在宅介護での昼夜逆転とレム睡眠障害とおぼしき症状に対応する方法に苦慮することがしばしあります。実際に専門医にレム睡眠障害と診断を受けているわけではありませんが、おぼしき症状としてレム睡眠状態の時にいろんなものが出ています。例えば、「ふっと目を覚ますと夢枕に誰々が立っていてこう言ったから俺はこうするんだ」といった話をされたりとか、それこそ半分眠っている状態で動き出したりする行動が出てきます。ただそれがどのくらい頻繁に出てくるのかもあったりして、なかなか症状としてうまくお医者さんに伝えることが出来なかったりとか、お家の人はただ寝言を言っているだけだと思っていたりとか。私はケアマネだけでなく併設の施設の仕事もしているのですが、日中に半分寝ている状態で声を上げてしゃべっていますが、その方は目をつむって寝ています。で、その後に目を開けて覚醒した時に聞くと、「そんな事は言っていない」と言います。あと「幽霊、お化けが自分の布団の中に入って来る」と言って不安になります。レム睡眠の時間に見ている夢とごっちゃになっているかなと思います。こういった方にはどういった声かけをしたら良いのか‥。不安ではない方は結構どうでもいいんですよ。「ああそうだね。お父さん出てきてくれたんだね」と言うだけですぐに落ち着かれます。そうじゃなく不安で訴えられる方、「今出たけど、昔何かあったんじゃねえか?」と。そうすると「いやいやそんなことはないです」と言った声かけをせざるを得ないです。お薬で対応する方が良いのかと思いますが‥。在宅の方であれば簡単にお医者さんに行きますが、老健に入っているとなかなか難しいです。

川瀬敦士 在宅でも施設でもそのような方が結構いるのですか?

難波淳(居宅・CM) はい、結構います。

川瀬敦士(川瀬・リハ) レム睡眠について触れている書籍がありますので少し見ていきます。数井裕光先生の(認知症知って安心!症状別対応ガイド メディカルビュー社)では、“夢を見ながら暴れている場合は起こしてください”と言っています。

川瀬裕士(川瀬・医師) レム睡眠期異常行動症(レム睡眠行動障害)のことでしょうか? レム睡眠自体は異常ではありませんが、レム睡眠は夢を見る睡眠で、寝てしばらくしてだんだん睡眠段階が深くなっていった後に出てくる夢を見る睡眠段階で、入眠後6090分くらいで出てきます。典型的なレム睡眠期異常行動症は、レビー小体型認知症、パーキンソン病の方に多いですが、ほとんどの人はそれを苦にしていない事が多くて、本人は全く覚えていないし、困っていないと言います。家族はそのことに気付いて、大丈夫かと心配しています。最近レビー小体型認知症の診断基準の中でも今まで以上に重要視されていて、かなり重要な一つの症状になっています。認知症の人がいたらほぼ全員にこれを聞かなければいけません。今困っていることは不安に思ってしまう事ですね。典型的なレム睡眠期異常行動症はそういった不安に結びつかないことの方が多いです。ですのでその不安を感じている人がレム睡眠期異常行動症とマッチする症状なのか、それとも別に不安感を持つ病気があるのかということが重要です。例えばレビー小体型認知症であればうつ症状の合併がすごく多いですから。その場合はうつに対する治療が有効でしょうし、またレム睡眠期異常行動症であれば、その症状に対しても試せる薬がいくつかあります。ただそれが問題になっているかどうかはわかりかせんが。おそらく不安は別に対応した方が良いかもしれません。

山寺忠之(薬局・薬) そうですね。いろんな薬が出てきています。

川瀬裕士 最近は医療保険の制度もこの春から変わり、いわゆる昔から従来使われているベンゾジアゼピン系睡眠薬がだいぶ使われないようになり、それに代わるお薬が出てきています。以前ほど大きなリスクがなく使えるものが少しずつ出てきています。

川瀬敦士 いかがですか、難波さん。

難波淳 結構印象に残っているケースなので、そういった意味では特殊な部類に入ると思います。複数の方の事例なので、お薬を個別に症状に合わせた対応でかなり改善すると思います。とにかく不安感を訴えるところが少しでも改善すればその方にとってはそんなに問題にならないのかと思います。その点について対応のヒントが得られました。

川瀬敦士 印象に残っていた不安感を持った人はレム睡眠期異常行動症ではないとすれば、その方はうつとかかもしれないですし、ある程度症状が出てきたのであれば医療機関にかかった方がいいと思います。

川瀬裕士 起きている間に見えるものは幻視で、それはそれで症状としてあるし、妄想もそれはそれであります。パーキンソン病やレビー小体型認知症では覚醒時に幻覚があるし、妄想もあるし、夜間のレム睡眠期異常行動症も全部あります。私の外来ではよくあることですが、例えば「誰かが俺を殺そうとしている」と本人が言っている場合、家族に詳しく聞くわけですが、それは寝ている時なのか、起きている時なのかを必ず確認します。起きている時は、それは幻覚や妄想なので、それはほっといて良いレム睡眠期行動異常症ではなかったりしますが、完全に寝ている時に、それが出るだけだったら、本人に「それは困りますか?」と聞くと「私は全然困っていません」と言う。家族に「困りますか?」と聞くと、「びっくりするけどそんなに困っていない」と言います。であれば「そのままにしておきましょう」という事になります。日中であれば幻覚や妄想が出てきて困ることがあるから、そこには「何か薬を使いましょう」と言います。ただこれもレビー小体型認知症であれば、幻覚や妄想を抑えるような抗精神病薬は使わなくても、抗認知症薬であるコリンエステラーゼ阻害剤という第一選択薬で使うべき薬だけで幻覚や妄想が消えてしまう人もたくさんいます。レビー小体型認知症でコリンエステラーゼ阻害剤が入っていない人は、本当はいくべき薬がいっていなくて、症状がコントロールされていない人も結構いるかもしれません。その時にレム睡眠期異常行動症があるかないかという問診が大事で、それがある人はおそらく1回はコリンエステラーゼ阻害剤を少量でも良いので試してみる価値があると思います。その方がレム睡眠期異常行動症もあり、幻覚もあり、不安もあった人であったならば、十分レビー小体型認知症の可能性もありますので。

川瀬敦士(川瀬・リハ) レム睡眠期異常行動症であるならば、基本的には本人は不安に思っていないことが多いということが一つ勉強になりましたね。

 

部屋の明るさ

川瀬敦士 それでは次にいきます。土田さんお願いします。

土田和樹(GH・介) 既に眠られている方で、睡眠を促すために電気を消して間接照明くらいの明るさにすると、逆に目が覚めて元気になってしまう方が一人います。普段だと目が覚めてまた眠りに入るまで様子を見ていますが、そこに時々せん妄とかが混じって、夜間帯に歌い続けたりするとちょっと困ったりしています。電気を消して暗くすると元気になるというところで。


はあとふるあたごグループホーム三条 介護職 土田和樹 氏

川瀬裕士(川瀬・医師) 消す前は眠っているのですか?

土田和樹 寝息が聞こえているので寝ていると思います。100才の方です。

川瀬裕士 暗くすると、それが本人に分かって、そこから起きだして騒ぎ出すということですか?

土田和樹 はい、そうです。

川瀬裕士 消さないとそのまま眠っているのですか?

土田和樹 寝ているのを確認してから電気を消すようにしていましたので、夜間帯にずっと電気をつけていることはやったことがありません。足が不自由で、日中は車いすに介助で移っていただいて、食事の前後だったり、覚醒状態を見て16時間から8時間くらいは離床する時間を小まめに設けてはいますが、それでも夜そういう状況がみられる時があります。

川瀬裕士(川瀬・医師) 電気を消す音とかじゃなくて明るさの変化に反応しているのでしょうか?

土田和樹(GH・介) 明るさなのかと思います。耳が遠くて、大きな声で話さないと聞こえないくらいですから。

川瀬裕士(川瀬・医師) 光の強さに反応して不安になるということでしょうか。明るい方が安心なのでしょうか?確かにテレビをつけながら眠る方もいますね。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 薄明かりではなくて真っ暗は試したことがないのですね。

土田和樹 はい。試したことはないです。

川瀬裕士 それくらいの年齢の方であれば薄暗いのも暗いのもあまり差がないと思います。明るい状態から暗くなったところで反応している状況は間違いないですね。結局その後はまた寝るのですか?

土田和樹 しばらくすると眠られます。最初はちょっと騒ぎますが、夜中の2時くらいの時間帯になるとまた眠られています。

川瀬裕士 良かれと思って、ぼんやりした明かりがちょうど落ち着くだろうと、この蛍光灯のようなコウコウした明かりよりも良いと思ってやるんだけれどもね。

川瀬敦士 その方は起きた時にどういうことを言うのですか? 訴えなどは? 夜は夜で分かっているのでしょうかね?

土田和樹 分かっていないかもしれません。意思の疎通がだいぶ難しくなってきています。

川瀬敦士 「夜なので電気消しますね」と前置きがあって消しているのですよね?

土田和樹 そうですね、起きている時は声をかけて消しますし、寝ている時は声がけせずにそのまま消します。

川瀬裕士 照明は調光のタイプですか?

土田和樹 いいえ違います。直接当たらないような洗面台にある間接照明のようなものです。それを付けておくと薄暗く、眩しくないくらいの明るさです。

 

日中傾眠される方への対応は?

土田和樹 あともう一つ相談したいことがあります。ある方がいまして、もともとその方の生活習慣があって夜間帯、夜中の2時とか3時くらいに眠られている方がいまして、そういった方が日中に眠気を感じている時があって、普段過ごしている席で傾眠されてしまいます。そういった時はお部屋に行って休んでもらった方が良いのか、それともそのままにしておいた方が良いのか、職員の間で意見が分かれていまして、日中傾眠される方への対応は皆さんどうしているのでしょうか?

川瀬裕士 その方の意思や好みがあって、その方の生活リズムで、寝る時間がすごく遅いと。でも朝はみんなのリズムに合わせて何となく起こされてしまう。当然、睡眠時間が短くなるので日中に眠くなると。その方が家で自由に暮らしているのであれば、もう少し朝は寝ていればそれで良いのだろうけど、出来れば職員としてはみんなのリズムと合わせた方がいいのかなとも思っていて、本人が部屋で寝たいと思っても他の人と起きて居てもらうべきなのか、一般的な昼夜のリズムとずれても本人の要望のままに寝たい時に寝て起きたい時に起きてもらうべきなのか、意見が一致しないのですね。

土田和樹 そうですね。

川瀬敦士 夜型、朝方はあると思いますから、みんなが21時に寝て7時に起きるというのにずっと合わせるのは難しいこともあるとは思いますが。本来はどうあるべきか?できるだけその方のスタイルに合わせてあげられれば一番良いと思いますが‥。各施設ではどういった対応をしているのでしょうか?

原島哲志(川瀬・介) 仮にそのような方が居たら、うちの場合はかなりスパルタなので(笑)、そういう生活をしていたがために認知症になってしまったりとかもあると思いますから、まずは生活習慣、リズムを徹底的に改善しようとすることもひとつの手段なのかと思います。寝るべき時間帯にはやっぱり寝てもらいたいので、本当に睡眠にはかなり気を使っています。先程言われた電気の件も、ついていないと眠れない人、真っ暗じゃないと寝られない人、といますので、なるべくその方に合わせて電気は調整しています。一年中、一晩中つけっぱなしの人も中にはいます。それでも寝ているので別に良いかなと思います。あと注意していることは室温です。真冬でも暖房を消す人も中にはいますし、つけっぱなしの人もいますし、その辺も我々の方で調整します。その方に合わせて、夜間、暑くて起きてしまう人も中にはいますので。室温と電気はかなり気を使っています。電気は基本消すようにしています。ただ自分でトイレに行かれる方は、トイレの電気だけつけてドアを少し開けておくと光が出ていますが、寝ているところにはその光は当りませんので。そういった工夫をしています。昼間は、その方の認知症のレベルにもよりますが、かなり重度になってくると眠ってはいませんが日中も目を閉じていることがほとんどになっていきます。なのでベッドで横にするかどうかは、とりあえず椅子に腰かけて寝させておいて、危険性が無ければそのままでも良いのかと思います。あとうちでは最近アロマを焚(た)いています。昼間は昼間用を、夜は夜用を焚いています。特に眠りが浅い方や、いつまでも起きている方のお部屋は2時間くらい焚いて、食堂があるのですが、そこにその方が限界になるまでテレビを見ながらいてもらっています。そして21時過ぎくらいにウトウトし始めますので、タイミングよくお部屋に連れて行ってそのままお休みになります。上手くいけばですが。毎回は通用しませんが。あとは昼用のペンダント型のアロマを日中してもらっています。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 今、アロマの話と体温の話が出たので書籍にちょっと触れておきたいと思います。まずアロマですが、浦上克哉先生の(認知症のよい対応わるい対応 日本評論社)では、“睡眠の導入にアロマオイルを使う。副交感神経を刺激して鎮静効果のある真正ラベンダーとスイートオレンジがおすすめです”と言っています。逆に日中覚醒を上げるようなアロマオイルがあるようです。日中用と夜用があるようです。後ほど調べてみて下さい。あと体温については岐阜大学大学院医学系研究科神経内科・老年学分野教授の下畑亨良先生のブログでは、“人は体温(深部体温=直腸温)が低下するときに眠くなる(図4)。入浴後体温が冷めていく時は眠るのに良いタイミングである逆に電気毛布は体温が下がりにくくなるのでずっとスイッチを入れておかず温まったら切ることが良い”と書いてありましたので参考にしてみてください。米田さんの所は24時間施設ですし、どうですか?

図4 : 下畑享良先生ブログ記事より 2015.3.10「どうして春になると眠くなるの」

Y氏(特養・介) そうですね、先程お話に出ましたが、うちの施設も一人一人に合わせて電気の明るさを調整したり、暖かい方が良く眠られる方が一人いまして、その人は暖かくお部屋の温度設定をしたりしています。あと、お部屋の常備灯も最初はつけていましたが、その方にとってそれが火の玉に見えて怖いみたいなので、明るくして寝るようになりました。こちらとしては目がまぶしいと思って電気を消したりしますが、逆に明るくしてずって寝ている方もいたりします。

川瀬敦士(川瀬・リハ) やはり各自で照明は工夫しているようですね。あと日中の活動時に眠たくなった人はベッドに誘導していますか?それとも椅子に座ったままにしていますか?

Y氏(特養・介) その人にもよりますが、あまりにもグダンとしていればベッドの方に行ってもらいますけど、ウトウトしているくらいであれば、ソファーに座ってひざ掛けをして少し休めるようにしています。

川瀬敦士 極力座っていただくという事ですね。通所リハビリかわせみでは日中の眠い人にはどういった対応を取っていますか?

布施良友(川瀬・介) 傾眠する方はいます。お家でも一日寝ているようなので、かわせみでも傾眠されていましたのでちょっと様子を見ていましたが、昼食時に自分で食事が出来なかったので、その方は最近では思い切って昼食前に30分くらい横になってもらいました。そうしたら今まで、傾眠して昼食が食べられませんでしたが、30分くらい横になるようにしたら自分でご飯を食べることが出来るようになりました。人にもよりますが思い切ってご飯前に寝てもらって目を覚ますといった事も最近やってみました。逆に動くと困るという方もいますので、お家の方との情報交換を通じて思い切って寝てもらうのもありなのかと最近感じました。


川瀬神経内科クリニック 介護職 布施良友 氏

川瀬敦士 まとまって深い眠りを取れなければ、ある程度長い時間の中で浅い眠りを積み重ねていくことも必要なのかもしれません。食後に満腹になって眠くなることはありますが、食前に眠くなることもあるのですね。そういったことを臨機応変に対応していくことが必要なのですね。

 

転びやすいのに起き上がる、一晩中目が離せない

川瀬敦士 次の事例に行きます。ショートステイかわせやの例ですね。「昼少々ウトウトする程度で夜はほとんど眠らない方。眠っても1〜2時間。一晩中開眼状態で転倒のリスクが高いにも関わらず起き上がりは速くて歩き出そうとする。センサーが鳴ってからでは間に合わないので、止むを得ずスタッフルーム傍で臥床してもらっている。今のところ事故はないが他の利用者の介助をしている時は怖い」ということです。この例は施設で一番困ってしまう事だと思いますが、どうでしょうか? このような方はいますか? 老健ではどうですか?

早川直子(老健・リハ) いますね。

川瀬敦士(川瀬・リハ) どういった対応を取られていますか?

早川直子 ホールにベッドを移動してステーションに近くで休んでいただいたりしている方はいます。

川瀬敦士 やはりある程度皆さんの目の届くところにいていただくということですね。起きてしまうことはしょうがないことですし、無理矢理お布団に入れることはできませんし。本人の不安であるとか、おトイレに行きたいとか、夜と昼が良く分からずに動いてしまう事もありますからね。そういう方は米田さんのところではいますか?

Y氏(特養・介) そうですね、ここまでリスクの高い方、センサーを使ったりしている方はいませんね。

川瀬敦士 特養に入られる方はある程度介護度が高いということでれば、移動の面ではあまりスタスタ歩かれる人は多くないでしょうか?

Y氏 突発的な行動とかはありますが‥。

川瀬敦士 ショートステイを利用しているこの方はご自宅でもそうなんでしょうね。渡辺さんの担当している方でこのような方はいますか? あまり経験したことがありませんか? 稀なのでしょうか?

渡辺美佳子(川瀬・CM) この事例だと本当にショートステイのスタッフが目が離せない状況なのだとわかりますし、ご家庭ではどんな様子か、寝室からトイレまでの距離とか住宅の環境も分からないので何とも言えないと思いました。

原島哲志(川瀬・介) ご自宅でも寝ていないようですよ。ショートステイのスタッフから聞きました。ご自宅でも寝ていないのか調べたようです。ショートステイで環境が変わったから寝ないのかどうかを。ご自宅でも寝ていないようで、ショートステイの状況とほとんど同じだそうです。

川瀬敦士 どうなんでしょうか。ご自宅で認知症の方と暮らしている家族の方の話の中で、やはり夜の問題が出てきて家族の為にショートステイを利用するとか、やはりあるのでしょうね。

山谷幸(家族・世) そうですね。よく聞くのはベッドサイドに鈴をつけているとか、手に紐を結んで動くと分かるようにして置いたりしていますね。あと鈴なんかは皆さん結構つけているようです。だから夜は(家族も)寝られない。やっぱりショートステイにお願いしてその日はゆっくりと寝る。そういうのもありますね。家族だから逃げようがないし。勝手に動いて倒れたりトイレで失敗されたりするよりは、起きている。その人のリスクを優先してしまうというか、そうしないとその後始末をする方がもっと大変になる。

川瀬敦士  先程もありましたが、トイレに行ってもらいたいけど汚さずに行ってもらいたいから、やっぱり一緒について行くしかない。そうですね〜。私も訪問リハビリで行っていた人は1日に5回から6回奥様がその介護をしていました。その方は若年性認知症の方だったので足腰はしっかりしていました。でもなかなか解決策がなく、寝る前のおトイレの回数を減らしたいから、2時間前から水分を控えましょうとか、寝る時間を遅くしてみましょうとか、いろいろとやってみましたが、結局は症状が進行して自分で動けなくなるくらいまでずっと奥様が介護をするので、その繋ぎの為に、参考書籍にも書いてありますが、“ケアマネに相談し、ショートステイを上手に利用しましょう。(和光病院式認知症ケア実践ハンドブック 小学館)”とか、こういったものを合わせてやっていったようです。いろんなサービスを利用しながら。あとは鈴、いかにすぐに気が付くか。転倒をしないための手立てとか、自動センサーで光をつけるとかありますし、立ち上がりやすい環境もあるでしょうし、付き添う家族が介助しやすい形の手立てもあると思いますので。まだ紹介していない事例もありますが、今回も十分濃い内容だったと思います。

 

感 想

川瀬敦士(川瀬・リハ) 最後に皆様より一言ずつ感想をいただきたいと思います。

山谷幸(家族・世) 初めての参加で目がパチパチしています。皆さんに聞いてもらいたいことがあります。「ご主人がそれまでいつもできていたことができないし、どうもすぐに忘れてします」ということを奥さんが気付いた時に、一番初めにどこに行ったらいいのかが分からないということがあるようです。そこでご本人も不安ですがご家族も不安で、変わっていくご主人を見ていくことの辛さがあるようです。自分が今まで関わって一緒にいてしてきたことが、こんな声がけをして、あんなことをしたということが、本当は(本人に)悪かったのではないかと自分を責めている、そういう人たちがすごく多くて‥。介護認定には至りませんが、ちょっと異変に気付いた時にどこに声をかけて、どこが手を差し伸べてくれるのかによって、その後が大きく変わってくるという事があります。最近三条市の広報に認知症の人と家族の会の情報を載せていただいてから、広報を見た方から受診も連れていけないケースがすごく多くて、あと障害を持った人がご自分の両親の面倒を見なければいけない状況があるという事もあり、どうしようもなくなっているケースが実際に三条でもいっぱいあり、今日集まっている方々に手が届けば何とかなると思いますが、手が届くまでが本当に辛い人達が今も大勢いらっしゃると思います。それにはどうしたら良いのか? 家族の会では集いに来ていただいた方には、三条市包括支援センターの情報を流したりしますが、この方たちが本当に良いところで、良い人達を巡り合えればとすごく思います。家族の会を毎月第二土曜日に開催しています。本人や家族以外、専門職の方も来ていただいて、いろんなアドバイスをいただいています。

川瀬敦士 専門職の方も参加していいのですね。

山谷幸 はい、大勢の専門職の方が参加していただいています。去年、一昨年は薬局の方がすごく大勢来ていただきました。ありがたかったです。

高橋芳雄(川瀬・介) 今日はありがとうございました。大変勉強になりました。実は私の祖父も認知症で5年程私の母が介護していましたが、やはり何が辛かったのかは、夜眠れないのが辛かったようです。多少の暴言や暴力、トイレ問題は夜しっかり眠ることが出来れば問題ないが、夜眠れないことで昼間に余裕がなくなり辛かったと言っていました。それを聞いてやはりご本人も確かに辛いですが、介護するご家族も辛いと思います。今現在、私は通所リハビリテーションで働いていますが、ご利用者様を迎えに行くとご本人の体調は当然確認しますが、それ以外のご家族の表情とか「お母さん大丈夫ですか?」とご家族の方にも声をかけるようにしています。ありがとうございました。

布施良友(川瀬・介) 夜間の睡眠は個人個人で良い条件があると思うので、日中通所リハビリテーションで体を動かすリハビリだけではなく、家族とのやり取りの中で日中の生活を夜の睡眠にうまくつながるように情報交換しながら活かしていきたいと思います。ありがとうございました。

渡辺美佳子(川瀬・CM) 一言に睡眠といっても、不眠・昼夜逆転をマイナスの事としてとらえていましたが、良い睡眠をとるにはどうしたら良いのかという事を前向きに考えた時に、今まで自分の好きに、部屋を明るくして寝るだとか、何時に寝るだとか習慣的なところが年を取って何か病気になったとしてもずっと続いて行くものだし、その方が今まで一生懸命生きてきた人生が睡眠にまでも影響を与えていることを今回改めて知ることが出来ました。私もケアマネージャーとして夜間の介護負担が、ご家族の方に与える影響がすごく大きくて、その為にご家族の血圧が上がってしまったりとか、追い詰められているご家族も多いので、やはりご本人の生活の部分とプラスしてご家族の今置かれている状況だとか、その思い、すごく罪悪感を感じているご家族は多いので、そういった気持ちも汲み取れるよう支援していかなければいけないと改めて思います。ありがとうございました。

加藤智世(薬局・薬) 当薬局では施設や個人宅でお薬を管理している方がいますが、やはり不眠に悩んでいる方が数多くいますが、薬剤師として薬学的アプローチだけではなくて、不安とかそういったものも取り除いていけたらと思いました。あの時のお話は不安の裏返しだったのかなと思うところもあって大変参考になりました。今後に活かしたいと思います。ありがとうございました。

山寺忠之(薬局・薬) たくさん不眠とか昼夜逆転されている患者様のご家族からよくお話を聞く機会はありますが、どうしても薬剤師は薬の事ばかりを考えてしまう傾向が強くて、この薬が原因かな、この薬を追加すればいいのにとか思ったりしますが、お薬以外にもいろんなアプローチの仕方があることを皆さんから学ばせていただいて今後は違った考え方や助言ができるかなと思っています。今日はありがとうございました。

Y氏(特養・介) 今回初めて参加して非常に緊張していました。皆さんから貴重なご意見をいただいて沢山勉強をさせていただきました。私も家で母の面倒を見ていたりしていますが、不眠や昼夜逆転は家族の立場としても体験する部分もありますし、介護士(スタッフ)として職場の不眠の方を見ることもありますので、どちらも大変なことも分かっていますが、皆さんから自分が想像もつかなかった意見を聞いて大変勉強になりました。今日はありがとうございました。

土田和樹(GH・介) 具体的な事例は持ってきませんでしたが、この場で皆さんにお話ししてご意見をいただいたことで、また自分の事業所に戻って今日学んだことを他のスタッフと情報共有したいと思います。また他の方の事例を聞かせていただいて、不眠で大変な思いをしている方がいるのだと改めて思いました。今日はありがとうございました。

難波淳(居宅・CM) 初めて参加させていただきました。認知症の方の眠れない状況にはいろんな要素が関わっていて、ものすごくその方その方の個別の対応が必要になってくる問題なので、一つ眠れないことを考えるにしてもものすごくその方のバックボーンまで知らないと難しいことが多いのだと改めて認識しました。日々ケアマネージャーとしてご家族と接する中で、認知症と診断されてしまう怖さが家族の中であるのだと思います。もっと早く手を打っていればと後になって後悔されるご家族もいます。そういったところも含めてこういった場で話し合った事がホームページ等で広まって、認知症はそんなに怖くないぞと思えるような世の中が出来ると良いと思いながら日々仕事をしています。ありがとうございました。

坂井美和子(川瀬・看) 皆さんおっしゃるように不眠にはいろいろと原因があって、でもそれに対して皆さん個別に対応されているので、すごいと思いました。あと山谷さんがおっしゃった、受診につながらないことや受診拒否に対して何か手助けになることとして、認知症初期集中支援チームが立ち上がりました。認知症疾患医療センターとしてコーディネーターとして活動させていただいております。ちょうど早川さんと山寺さん、布施さん、川瀬敦士さんがチーム員でいます。多職種で関わって受診につなげるようにしていますので、まずは包括支援センターに相談していただいて是非力を合わせて関わっていきたいと思います。

原島哲志(川瀬・介) 夜はよく眠らないと日中の活動も下がってしまいますので、薬は最終手段とし、その他の対応で何とか考えていろいろとアイデアを出していけたらいいと思っています。今日はありがとうございました。


川瀬神経内科クリニック 看護師 坂井美和子 氏

早川直子(老健・リハ) 施設の限られた空間の中で、帰ることが難しい方ばかりで、パターン化した対応になっていたなと思いました。個別対応のお話を聞くことができて刺激になりました。ありがとうございました。

川瀬裕士(川瀬・医師) ありがとうございました。今回は不眠の話でしたが、今までのテーマを振り返ってみて、実はこの不眠の問題は一番薬が効いて、最終手段ですが薬を使えばほぼすべての人に眠ってもらうことが出来ると思います。ただ一方では、それをすると転倒のリスクが増えたり、認知症を悪化させたりすることがあるので極力それは最後の手段にしたいところです。できるだけ薬以外の良い方法を考えていって、今日ここで出していただいたように、これからも様々なアイデアや経験を集めてもらいたいと思います。それは介護現場の職員やご家族の中から見つかるものだと思います。それでもだめで家族が疲弊し、本人も苦しんで、何をやっても結局ダメでつらい状況が続く場合は、そこはきっと薬でほぼ確実に眠るように持っていくことが出来ると思いますのでご相談ください。最後に不眠の話とは直接は関係ありませんが、先ほども少し話に出ていましたが、認知症の人と家族の会に来て認知症が始まっているかもしれないけど、そもそもそういう診断名を付けられるのが(本人が)嫌で逃げてしまうとか、だけど結果は悪くなってしまうと。どこに相談すれば良いのか、どうすれば良いのかよく分からないと。当然まずは病院にかかって欲しいです。それはなぜかと言うと、治せる認知症もたくさんあるからです。それから認知症じゃないのに認知症だと思って自信を失ってしまっている人もたくさんいるからです。それは地域包括支援センターというより、できれば病院やクリニックに行って、ある程度勇気を出して調べてもらいたいです。もったいないわけです。治せるものもたくさんあるので。あるいは予防の為にできる事、助言出来る事が山ほどありますので。認知症はなったら終わりではなくて、軽い段階から少しずつ、少しずつ進行するものがほとんどなので、どこかの時点でアウトということではないです。少しずつ進行していくので、どの段階でも脳の機能を伸ばしたり上げたりする手立てはあります。認知症に関しては遺伝的要因以外に自分たちが生活の何かを変えることで予防できる部分が約35%あると言われています。まずそれをしっかりやりきることで進行を抑制する方法はたくさんありますので、それを知るためにはやはり勇気を出して、まずはクリニックに電話をかけてくれればと思います。本人は行きたくないと言っていても家族から連絡をいただければ、今は認知症初期集中支援チームとかいろんな形がありますので。治せる認知症を逃さない、あるいはそれ以上悪くなってしまう認知症をそれ以上悪くさせない手立ては、薬もそうだし、非薬物療法もいっぱいありますので、是非ご相談いただければと思います。

川瀬敦士(川瀬・リハ) 皆さんのおかげで本当に内容の濃い研修会になりました。ありがとうございました。

 

―参考書籍―

「認知症のよい対応わるい対応」浦上克哉 日本評論社

・昼間は短時間でも外で活動する時間をつくって、日光に当たるように心がけましょう。日光に当たることによって、メラトニンという日内変動をつかさどるホルモンが分泌されます。

・夜は部屋を真っ暗にしないこと。小さな灯りを一つ点けておくといった工夫をすると安心できる。

・睡眠の導入にアロマオイルを使う。副交感神経を刺激して鎮静効果のある真正ラベンダーとスイートオレンジがおすすめ。

 

「和光病院式認知症ケア実践ハンドブック」 和光病院看護部 小学館

・夜なかなか寝つけないときは、温かい飲みものを飲んで布団に入ると眠れる場合もある。

・病院で薬物調整をしてもらうのが一番。

・ショートステイを上手に利用しましょう。

 

「認知症の9大法則 50症状と対応策」 杉山孝博 法研

・横にならないようにして、昼間は趣味の活動をしたり、友人とおしゃべりをしたりして、適度に刺激のある生活をする。

・寝る前にぬるめのお風呂に入ったり、足湯をしたりする。

・明かりをつけておきましょう(暗いと不安に感じる)。

・眠りにつくまで誰かがそばにいて背中をさする。

・失禁して叱られたことから、失禁してはいけないという強迫観念にかられ、眠れなくなる。

 

「認知症の知って安心!症状別対応ガイド」 数井裕光 メディカルレビュー社

・軽食やマッサージも有効です。

・本人が楽しみにできることを話しましょう。

・夢を見ながら暴れている場合は起こしてください。ベッドの周囲には危険なものを置かないようにしておきましょう。

 

「新しい認知症ケア 介護編」 三好春樹 講談社

・「帰らなきゃ」に対し、「今日は泊っていってください。」

・お年寄りが寝たら家族も静かにする。

 

下畑享良先生ブログ

・覚醒と食欲に関わるホルモン「オレキシン」は満腹になると減って、覚醒しにくくなり、眠くなってくる。

・人は体温(深部体温=直腸温)が低下するときに眠くなる。入浴後、体温が冷めていく時は眠るのに良いタイミングである。逆に電気毛布は体温が下がりにくくなるので、ずっとスイッチを入れておかず、温まったら切ることが良い。

・眠けをもたらすホルモン「メラトニン」の減少を防ぐには牛乳やバナナなどトリプトファンを多く含む食物から補給できる。